「30年前は120店舗あったのに…」現在は8店舗の《元気寿司》、"元気がなかった"30年を経て「最高益」「約15年ぶり新店舗」で静かに大復活の意外な理由とは?

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「当時、創業者はアメリカの本土進出を見据え、まずは手前のハワイに目をつけたと聞いています。ちょうど90年代は、日本人がハワイに行くブームが勃興していたうえ、現地でも海鮮や生魚を食べる文化が根付いており、親和性が高いと踏んでいたそうです。

そこで回転レーン式のスタイルを持ち込んだところ、当時は廻るすしが新鮮に映り、現地住民の心を掴む形に。業績が上がった結果、ハワイを訪れた別国のオーナーからフランチャイズ契約をしたいとお声がけを多々いただき、規模を拡大していく運びとなりました」(大塚氏)

その後も海外展開は着実に進み、現時点(2025年9月末)では240店舗以上を展開。国内の全ブランドを合わせた総店舗数200弱より多く出店している。

いまや他チェーン店も海外進出に躍起となるものの、元気寿司が先行者利益を受けた側面は大きい。くら寿司が2009年、スシローが2011年、はま寿司が2014年に初進出した流れを考えれば尚更だ。大塚氏は「海外進出してから30年以上が経ち、元気寿司は現地住民から老舗チェーンとして定着。若い世代の中には自国のローカル店として誤認している方もいるほど」と語る。

海外展開が成功したがゆえのジレンマ

こうしてGenki Global Dining Conceptsは、いつしか「国内では魚べい・海外では元気寿司」の二軸で、収益を確立していくようになる。

ここでようやく、元気寿司の新店舗(魚べいとの融合店)へと話がつながる。2010年前後から長らく、国内では魚べいを展開し続けることで、元気寿司の知名度は希薄になっていった。その一方で、海外では元気寿司での展開を続けていたため、魚べいの知名度はほぼない状況だった。

運営元が同じにもかかわらず、国内外で展開するブランドが異なることで、屋号の認知を統一できないーー。こうした状況は客層の取りこぼしにつながっていた。

昨今はインバウンド需要が顕著ななか、訪日客が国内を訪れても、元気寿司が郊外に8店舗しかない状況では流入が期待できない。ただ、魚べいに注力し続けている国内では、元気寿司ブランドの知名度が低いため、今さら新規出店しても客足が定着するか不透明だ。

いわばインバウンド需要を狙って元気寿司を出したいものの、国内の客層を考えると出店も現実的ではない、どこかジレンマを抱える悪循環に陥っていた。

そこで改めて、「元気寿司と魚べいの融合店」という形で、双方のブランド認知を底上げしようと考えたわけだ。屋号を『GENKI SUSHI×魚べい』と掲げ、グローバル旗艦店としてJR上野駅徒歩3分の一等地に暖簾を構える。そうすれば国内外の客が循環し、ひいては海外のフランチャイジーとの関係も強固になると青写真を描く。

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