「30年前は120店舗あったのに…」現在は8店舗の《元気寿司》、"元気がなかった"30年を経て「最高益」「約15年ぶり新店舗」で静かに大復活の意外な理由とは?

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そこで元気寿司株式会社(現株式会社Genki Global Dining Concepts)は1999年、他社に追随するように、100円均一業態のブランド『すしおんど』を立ち上げる。

以降、国内全ブランドで196店舗まで着々と展開を続けたものの、水面下では陰りを見せていた。先駆けて発展した大手ブランドに知名度で劣り、寿司のクオリティーが突出しているわけでもない。個性に欠ける後発ブランドは、二番煎じなイメージを払拭できず、先行きが不透明になる。

運営元の連結売上高を見れば、2008年3月期の287億円から、2009年3月期の273億円、2010年3月期の250億円、2011年3月期の225億円と減収の一途を辿った。

しかし、袋小路だった2011年に転機が訪れる。それが同年3月に発生した東日本大震災だった。当時、栃木県を本社に置いていた運営元は、東北や北関東を中心に店舗展開を続けていたこともあり、多くの店舗が計画停電や節電の煽りを受けた。

ここ数年の減収に、さらなる拍車がかかってしまうーー。本部は頭を抱えながらも、ベルトコンベア式のレーンを稼働させず、試験的にすべて注文式での営業に踏み切った。

オールオーダー制以降は毎年増収へ

すると意外にも、来店客からの不満は少なかったという。Genki Global Dining Conceptsコーポレート本部の大塚蒼氏が、当時を振り返る。

「オールオーダー制に切り替えた当初は、お客様からご意見をいただく機会もありましたが、新しい注文方式はすぐに浸透していきました。それ以前のお客様調査を見ても、レーンから流れる寿司を取るより、注文するお客様の割合が圧倒的に高いことが判明し、それであればすべて注文式にした方が他社との差別化につながるのではないかーー。

そう考えて2012年に、オールオーダー制の第1号店を開業。厨房と客席をつなぐ高速レーンを2段設置することで、より迅速に注文を捌く体制を構築しました」

『魚べい 吉祥寺店』の内観
『魚べい 吉祥寺店』の内観(写真:筆者撮影)

一見、回転ずしといえば、レーンに流れる様々なすしを見繕い、好きなネタを頼むのが醍醐味として定着しているように映る。その一方で、来店客の購買行動を紐解いてみると、注文して品質が担保された食事を楽しみたい需要は底堅かった。この盲点をいち早く突いたのが魚べいだったわけだ。

事業者側としても、オールオーダー制はメリットが目白押しだった。提供までの時間短縮による品質担保に加え、注文履歴から販促データを取得することで、最適な仕入れや廃棄削減も実現した。

同様に、現場で働く従業員としても労働環境改善に直結した。従来の回転レーンにすしネタを流しつつ、注文を捌く二刀流のオペレーションは、ピーク時に支障をきたすことも多々あった。注文対応に追われることで、回転レーンに流す総数が減り、客から「すしが流れていない」と本末転倒なクレームも舞い込んだ。

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