「30年前は120店舗あったのに…」現在は8店舗の《元気寿司》、"元気がなかった"30年を経て「最高益」「約15年ぶり新店舗」で静かに大復活の意外な理由とは?
「他にも、回転レーンにすしを流していた当時は、その時々の旬のネタを多めに投入したり、廃棄になりそうなネタを値引きしたり、土日はお子様に人気のネタを多めに流したりなど、臨機応変なオペレーションを求められていた。
それがオールオーダー制に切り替わり、POSデータを取得できたことで、仕入れの精度が向上し、新鮮なネタを出来立てで提供できるようになり、魚べいブランドの一番の強みにつながっている」(大塚氏)
いわば旧態のシステムを敷いていた当時、回転ずしはチェーン店でありながら、“小売の側面”も担っていた。閉店間際に惣菜を値引きするスーパーや、不定期でホットスナックを告知するコンビニのように、マニュアルだけでは徹底できない対応を求められる場面が多々あった。それがオールオーダー制に刷新されることで、一定の業務効率化を実現したと言える。
顧客の満足度向上、現場の業務効率化、運営元の収益性改善ーー。
三方良しのオールオーダー制に活路を見出した元気寿司株式会社は、旧ブランドからの業態転換を進めV字回復を見せる。リブランディング以降の連結売上高を見ると、谷間となった2011年3月期の225億円から、2012年3月期の232億円、2013年3月期の246億円とコロナ禍に突入するまで毎年増収を続け、2020年3月期には434億円にまで成長を遂げた。



海外進出の第一人者に
魚べいが躍進を見せる一方で、影を潜めていったのが、1968年の創業時から長らく社を支えた『元気寿司』ブランドだった。最盛期の1990年代後半は120~130店舗にまで規模を拡大したものの、前述の通りすしおんどや魚べいへの業態転換が進み、2025年9月末時点では8店舗までに縮小した。
しかし、冒頭で述べた通り、元気寿司は2025年10月10日に新店を構える(正確には魚べいブランドとの融合店)。JR上野駅から徒歩3分の一等地に、およそ15年ぶりに大型店を立ち上げ、さらなる成長ドライバーとして期待を寄せる。
とはいえ、なぜ今さら元気寿司を出店するのかーー。その背景を探るため、1990年代まで時を戻したい。
当時、国内で躍進を見せていた元気寿司は、海外への展開を視野に入れる。1992年にハワイに子会社を立ち上げ、その後1993年にハワイで第1号店を、翌年以降はシンガポールや香港にも拠点を広げた。国内で大手チェーン店がしのぎを削る最中、元気寿司が海外進出の第一人者であることは意外と知られていない。
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