皿洗いで叱られ、清掃で褒められ…、52歳女性の「タイミー」奮闘記。《将来への危機感から始めたスキマバイト》で見つけた第二の人生
改めてタイミーとは、履歴書提出や面接なしで、アプリに掲載された求人に“先着順”で応募できるマッチングシステムのこと。終業後に即入金されるのも魅力の一つだ。
私がラーメン店に応募したのは、募集時の「未経験大歓迎!」に魅かれたから。「簡単な仕事なので誰でもできます」「優しく丁寧に教えます」の文言にも安心感を抱き、飲食店は初めてながら門を叩くことにした。
50年生きていても、やはり未経験の仕事は緊張するものだ。「下見をするべし」と前日、店の前まで行った。店員の様子や服装など横目でチラ見しながら、店の前を往復する姿は完全に不審者であった。
どんぶりもろくに洗えない体たらくぶり
当日は気合いが前のめって、10分前にごあいさつ。「タイミーから来ました! 本日はよろしくお願いします!」と緊張のあまり声が裏返る私に、「じゃあ、そこにあるユニフォームに着替えて」と、テンション低めの女性店員。東南アジア出身の方で、リーダーを任されているようだ。
身支度を整えると、今度は男性店員が作業の流れや食器洗浄機の使い方を教えてくれた。昼どきで忙しいのか、教え方はざっくり。募集時の「優しく丁寧」はどこへやら。
そうこうしているうちに、ラーメンどんぶりが山のように積み上がった。油ギトギトゆえ、洗浄機に入れる前の予洗いを大真面目にやっていると、先の女性リーダーがつかつかと私のもとにやってきた。
「そんなスピードじゃ、どんぶりが溜まっちゃうよ! 遅いよ!」
「すみません!」と平謝りしながら、予洗いもそこそこに倍の速度で洗浄機に突っ込むと、順調に新しいどんぶりが量産されていった。今どきの洗浄機の威力に感心しつつ、なんとかコツを得たのもつかの間、スルリと指先から何かが落ちた。
餃子の皿だ。ガッシャーンという響きとともに、飛び散る破片。「申し訳ありません!」と再び平身低頭の私に、男性店員が奥から走ってきた。ヤバい、怒られる。
「僕もよくやりますから、気にしないでくださいね」
店員はそう言うと、あっという間に破片を片付け、定位置に戻っていった。「ああ、募集要項にあった“優しい”は本当だったんだ」と、泣きそうになったところで3時間の初バイトは終了。病み上がりの体力不足もあって、膝がガクガクと笑っていた。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら