実際に山中温泉を訪れてみると、街中には外国人観光客もいるが、日本人観光客のほうが多いという、昨今では少し珍しい観光地としての光景があった。
古びた外観の旅館も多い一方で高級志向の1泊10万円近い宿なども進出している。ある築年数が古い旅館の従業員は「中の設備を新しくするなど、積極的に設備投資しています。危機感を持っている旅館も多いですよ」と話す。
昔ながらの温泉街とは違った風情
街中のメインストリートの道路はキレイに整備され、昔ながらのお土産屋さんのような店舗はほとんど見かけない。女性や若者をターゲットにしたであろう、日本酒店やレストランやカフェなどが並び、その景観を楽しみにくる若者も溢れていた。飲食店に入ると、店主が街の変貌ぶりについてこうも明かすのだった。
「加賀温泉郷は、企業の保養地や社員旅行で使う街、という印象を持っていた方が結構いらっしゃった。ですが、それでは廃れていく一方だということで、ここ数年で若者向けの店も目立つようになりました」

その影響は、交通インフラにも表れている。加賀温泉で営業するタクシー事業者はこう説明した。
「金沢エリアと比べても、1台あたりの売り上げは大差がなくなってきました。もともと関西や中部地方からのお客様が多かった地域だけに、そのお客様が戻ってくれば、より活気づくのではと期待しています」
金沢や加賀温泉のケースは、官民一体となり開発や街づくりを行ってきた影響も大きいと感じた。観光地以外でも、地元に根づき趣がある飲み屋街を盛り上げるベテランや、若者が集まって文化を配信する店舗もあり、観光一辺倒でないことも街の魅力を引き上げている。
取材の中で、「インバウンドブーム」は落ち着いてきた、という言葉も多数聞かれたなか、既に別の観点から動きを見せている姿勢もまた、未来へとつながっていくだろう。
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