新旧が入り乱れるように小ぢんまりした雰囲気の良い小料理屋や若者向けのバーが密集するエリアは、歩くだけでも風情を感じる。先述のように人の流れは戻ってきているが、「飲み屋街は決して好ましい状況ではない」と飲み屋の店主は明かした。
「駅(金沢)のほうは確かに発展しているけど、この辺は好転したとは言い難い。調子がいいのは、外国人向けの海鮮居酒屋くらいで飲み屋の客足は減っている。常連や地元民が多いため、コロナで減ったお客様はまだ戻ってきていない。終電で帰るという人もいるから、単価も上がらないジレンマはある。交通アクセスが改善されないと、なかなか状況は変わらないと思いますね」

バスの代替手段としてタクシーが増加
金沢市の街中を歩いていて気づくのは、タクシーの多さだ。日中、夜間問わず、タクシーが流し営業も行っている。そして、単純に台数も多く、どんどん利用する者が目に入ってくる。
これは現在の地方都市の中ではかなりレアケースだ。先述のような主要な観光地が徒歩では少し遠いことや、夜間の繁華街へのアクセスなどの影響もあるだろうが、短距離の「ちょい乗り」文化が浸透している面もある。
「21世紀美術館」前で乗車した、コロナ後にタクシー業界に転職したという山田さん(仮名・50代)が言う。
「歩くには少し遠い、という観光地や商業施設が多いため、1000円未満の利用のお客様が占める割合が8割近いです。それは観光客に限らず、地元民でも同じ傾向がある。コロナ禍以降、金沢はタクシードライバーの数が増えたと感じますね。
バスがどんどん減り、タクシーが移動の主力となる時間が伸びていることもあり、収入は大きく増えました。金沢が稼げる、というイメージがついたことで、他県や県内からの転職者も少なくない。能登半島地震以降、その傾向はより顕著になっています」
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