広陵いじめ問題が暴いた「高校野球の闇」—美談の裏に隠されてきた“沈黙の構造”
特に、被害者が望まない形で情報が拡散されれば、それは新たな二次被害につながる危険もある。ましてや、爆破予告や関係者とされる人々の個人情報の拡散や誹謗中傷はもってのほかであり、決して許されることではない。
とはいえ、重要なのは、SNSという外部の「最後の出口」に頼らざるを得ない環境こそが、心理的安全性の欠如を如実に示しているという点である。本来、部内や学校の制度の中で安全に声を上げられる仕組みがあれば、こうした外部告発に至らずに早期対応が可能になるはずである。
指導者は「知らなかった」では済まされない
部活動における監督・指導者は、単に技術や戦術を教えるだけでなく、部内の人間関係の秩序を形成する権限と責任を持つ。
いじめや暴力事案が発生した場合、「知らなかった」では済まされない。実際、海外の研究でも、指導者が選手間の人間関係に積極的に関わるチームでは、いじめやハラスメントの発生率が有意に低いことが示されている。
監督が心理的安全性を意識し、異論や報告を歓迎する姿勢を示すことは、単なるマネジメント手法ではなく、いじめ防止の中核である。広陵高校の事例は、監督や学校の管理責任、そして「声を上げられる文化づくり」がいかに重要かを社会全体に突きつけたといえる。
• Edmondson AC(1999)Administrative Science Quarterly, 44(2): 350–383.
• Smoll FL, Smith RE(2002)Kendall/Hunt, pp. 211–233.
• Morita Y, Soeda H, Soeda K, Taki M(1999)Routledge, pp. 309–323.
• Yoneyama S(2015)Routledge.
• 藤後悦子ほか(2015)東京未来大学研究紀要, 8: 1–10.
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら