広陵いじめ問題が暴いた「高校野球の闇」—美談の裏に隠されてきた“沈黙の構造”

高校野球の名門・広陵高校が、甲子園2回戦を大会途中で辞退するという異例の事態となった。きっかけは、部内でのいじめ問題がSNSを通じて広く拡散されたことだった。
学校側は、学校への爆破予告や生徒への誹謗中傷が相次いだこともあって、「事実関係の調査と被害生徒のケアを優先する」として辞退を決断。SNS時代における情報の即時拡散、そして「いじめはなぜ起こり、なぜなくならないのか」という問いが改めて社会に突きつけられた瞬間であった。
運動部でいじめが起こりやすい心理的背景
学校内でのいじめは学級内だけでなく、部活動、とりわけ運動部でも繰り返し発生している。特に日本の運動部は、次のような特徴から、いじめが温存されやすい環境を持つ。
第一に閉鎖性である。部活動は練習時間が長く、休日も遠征や合宿があるため、外部との接触が少なくなる。内部で起きた問題は外に漏れにくく、「内輪のこと」として処理されがちである。
第二に序列文化である。先輩後輩の上下関係は、技術指導の効率化や規律維持に役立つ一方で、権力の濫用を招く温床にもなる。「先輩の言うことは絶対」という暗黙のルールが、時に不当な命令や行動を正当化してしまう。
第三に同調圧力である。部の方針や雰囲気に従わない者は「協調性がない」と見なされ、孤立や標的化のリスクが高まる。これはチームワークの美名の下に行われる排除であり、部内の「空気」がそれを助長する。
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