乗客たちは議論をはじめた。まずBが口火を切った。
犠牲者を決める恐怖のくじ引き
B:皆さん、こんなことをしている暇はありません。ここは公平に、くじ引きで決めましょう。
全員が同意したので、くじ引きが用意された。いちばん長いヒモを引いた人が犠牲になることになった。くじ引きに参加しない人がいれば、その人が犠牲になることも決まった。Bも1本を選んで引いたが、彼が選んだヒモは、いくら引っ張っても終わらないほど長かった。Bの顔色が暗くなった。
B:お……おれは……死にたくない……! おれには家族が……。
(ここで、この光景を見ていたCが声を荒らげる)
C:おい、くじ引きで決めようと言い出したのはあんただろ? ほかの人がくじを引いたなら、あんたが真っ先にその人を海に投げ出そうとしたはずだ。それなのに、いざ自分が選ばれると死にたくないなんて、あり得ない。皆さん、こいつを海に投げちゃいましょう!
(乗客たちが立ち上がってBに近づくと、Aが彼らを止める)
A:皆さん、ダメです。この人を海に投げることは、罪のない人を全員で殺してしまうことになるんですよ。
C:もういい! 皆さん、このうるさい人から殺しちゃいましょう!
(乗客たちが、またいっせいに相づちを打つ)
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