「神奈川大学の授業料免除試験を新聞記事で母が見つけ、札幌で受験できることから、『試しに受けてみたら?』と言われたのです。あまり気乗りしないまま受験しましたが、想定外の合格で状況が変わりました。授業料免除とはならなかったのですが、入学試験が免除されたのです。合格通知を見た母が、“あなたに行ける大学があるとは思わなかった”と号泣したのです。その時、これまで支えてくれた両親に、これ以上負担はかけたくないと思いました」
松井さんは、この神奈川大学の合格をきっかけに、東京での本格的な私大受験は見送り、第1志望だった慶應大環境情報学部と東京外国語大イタリア語専攻の2学部のみの受験に絞りました。いずれも不合格となりましたが、すでに合格していた神奈川大学への進学を決意することで、長い浪人生活に区切りをつけました。
「今ある場所」を受け入れるまで

3浪の末、神奈川大学外国語学部英語英文学科に進学した松井さん。しかし、入学後すぐ、「自分はもっと上の大学を目指せたのでは」と強い後悔に苛まれたといいます。
そんなとき、再び支えになったのは母の一言でした。
「『もし早稲田とか、南高の時みたいにレベルの高い学校に受かっちゃったら、単位が取れなくて卒業できなかったかもしれないよ』と言われました。この一言に、ハッとさせられたんです。そこから気持ちが切り替わり、腐らずに大学に通うようになりました」
さらに松井さんに「今の大学を卒業する」決意を固めさせたのは、2人の高校時代の友人の存在でした。
「1人は、慶大へのこだわりから5浪の末にうつ病を発症して自ら命を絶ってしまいました。もう1人は、中大法学部に現役合格しながら、真面目すぎて統合失調症を発症、結局8年在籍して卒業できず中退し、夢だった弁護士にはなれませんでした。そうした高校時代の友人たちの姿を目の当たりにして、自分にできることは今の大学を無事に卒業することだと心から思うようになりました」
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