OSGコーポレーションは2024年4月、上海に50坪のカフェ併設型店舗をオープンし、2025年8月には、上海のモール内に”食パン専門店レストラン”の開業をはじめ、海外出店に攻勢をかける。こうして海外でイートイン形態の進出を進めつつ、日本国内でもカフェ併設店舗を“逆輸入”していく算段だ。
月商500万円のカフェ併設型店舗
その先駆けとなったのが、2025年3月31日に、専門店からの業態転換で開業した『GINZA NISHIKAWA COFFEE ROASTERY』だ。徒歩圏内に歌舞伎座や築地場外市場が位置するインバウンドの玄関口で、まずは様子を見る。

実際に、休日の夕方に来店すると、20~30坪規模の路面店には、それなりに客足が見られた。1時間半ほどの滞在で、テイクアウトとイートイン合わせて、15組(人数で言えば20人強)の来店客が確認できた。そのうち半数はインバウンドで、ならすと客単価は1000円強といった所感に落ち着く。
イートインでは、サイフォンで淹れたブレンドが680~800円(税込、以下同)や、味玉や奈良漬が入ったたまごサンドが600円で並ぶ。

折角なので、たまごサンドに、クロワッサン(480円)、アイスコーヒーを注文すると、値段以上のクオリティを感じられた。サンドイッチは、口溶けの良い甘さ控えめのパン生地に、タルタル感のある卵ペーストが馴染む。

クロワッサンは手のひらからはみ出るほどの大きさで、冷えてもバターの風味が嬉しい。優雅に店内で過ごしていると、「今日は塩バターロールパンが売り切れ?」とリピーターらしき声も耳に入った。

聞けば、月商は500万円ほど。おおよその内訳は、食パンが50%、サンドイッチなどの個食パンが20%、そしてコーヒーが30%に分かれる。「坪あたり25万円ならまあ合格点ですね」と頷く湯川氏は、将来的に国内でもカフェ業態の展開を視野に入れる。9月には三田に、10月には蔵前に新店舗を開業すると明かす。
また、ブームが鎮火した中でも、「主食である食パンは需要が底堅い」と湯川氏。銀座に志かわでは毎月、催事(百貨店や商業施設などの通常店舗以外で商品を提供するイベント)を行っているなか、今年4月に大宮駅構内で開催した際は1日平均500本を販売したという。
総括すれば、浮き沈みを経験した高級食パン専門店は、各ブランド独自の活路を見出している。ベーカリー業態への転換や、スイーツ色を押し出したコンセプト、カフェ併設のイートイン路線、海外展開……。取材した2ブランドだけで、方向性は多岐にわたる。
裏を返せば、かつて食パンという限られた商材で、1000店舗以上が乱立したブームの特異さが際立つ。何となく世間は群がり、そして自然にさめていくーー。一見、一過性の流行は実態が掴みづらいが、それだけ複合的な要因が絡み合った証左でもあり、得てして移ろいやすいのが本質なのかもしれない。
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