アルプス山脈は十分に素晴らしいかもしれない。局所的最大値しか必要ではないときもあるのだ(現状で差し支えがないのなら、それで十分ではないか?)。
食道楽でもないかぎり、新しいレストランを絶えず探索していたら、永遠に満足できずにいる羽目になる――すでに大好きなのがわかっている料理を渇望しながら。
系自体が不確実なら、最高峰に到達しようとするのは間違いになりうるときもある。断崖が近くにある場合はなおさらだ。
偶然の巡り合わせやブラック・スワンのせいで状況が一瞬で変化しうるときには、局所的最大値と全域的最大値のロジックは心もとないものになってしまう。
進化はあなたより賢い
常に変化する環境では、ランダム化した実験という賢明な策に頼るのが役立つときがある。
進化はランダムなその場凌(しの)ぎの修繕を重ねることによって、複雑な問題に対する巧妙な解決策を創り出してきた。その類いの解決策は、内省的で意図的で知的な存在である私たちがこれまで見つけ出すことができた解決策よりもはるかに優れている。
これは、生物学では「オーゲルの第2法則」として知られている。進化はあなたより賢い、というのがそれだ。
古細菌が誕生したのは約37億年前だが、生命が変異や自然選択や遺伝的浮動に基づく探索によって構築されていなかったなら、私たちは今も依然として古細菌のままでいたことだろう。
生命内部で執拗に実験を行う、思考も内省もしない手法が、試行錯誤を通して、驚異的なまでに多様な形態的特徴や生存戦略、さらには意識さえも生み出してきた。
探索し、それから活用し、さらに探索し、また活用する。効果的に探索するには、不確実性を全面的に受け容れなければならないときがある。
「より賢い思考」では解決できない問題と取り組むため、より良い解決策を慎重に練り上げようとする代わりに、ランダム化された解決策に頼ることによって、進化の知恵は発揮される。
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