だが、自分の行動の重要性をいっそう高める機会を最大にしたいのなら、人類がこれまで進化させてきたじつに素晴らしいイノベーションの1つから、最善の道筋が導かれる。それは協力だ。ともに働く人々は、ともに変化を生み出す。
強い影響力の働くこの世界では、どのように生きるべきか? 人間は他のすべての生き物と同様、世界とかかわり合ううえで、2つの戦略のトレードオフに直面する。「探索」vs.「活用」だ。
探索とは、当然ながら、どこに向かっているのかわからないまま、さまよい歩くことだ。活用とは、わかっている目的地に向かって突き進むことを意味する。
両者の間のトレードオフは、数学でも精力的な研究――特に「多腕バンディット問題」として知られる、推測に基づく難問にかかわる研究――が行われている分野となっている。
もっとも、その中心となる考え方にはどんな数字も必要ない。これまで一度も行ったことがないレストランをたまたま見つけ、そこで試しに食べてみるのが探索戦略だ。お気に入りだとわかっているから、これまで何度となく食べたことのあるレストランに行くのが活用戦略だ。
「局所的最大値」対「全域的最大値」
こうした考え方は、「局所的最大値」対「全域的最大値」と呼ばれるものと関連している。
こんな想像をしてほしい。あなたは登山家で、人生の最大の目標は到達可能な最高峰に登ることだ。
あなたはアルプス山脈に拠点を置いている。だからしばらく歩き回り、最高峰を見つけ、独りよがりの満足感を抱きながら登頂する。任務完了、と心の中で思う。
その後、アルプスに拠点を置いている別の登山家に出会う。その人は、もっとずっと高い山を制覇した、と言う。アルプス山脈の最高峰を制覇すると、探索を続けて各地を回り、ヒマラヤ山脈に到達し、エヴェレスト山に登った。
あなたは地元の最高点(局所的最大値)に到達したが、世界の最高峰(全域的最大値)が制覇されるのを待っているとは知らなかった。
十分に探索する前に慌てて活用すると、より良い可能性があることを知らずに、常に地元の最高峰に登ってばかりになる、というのがこの話の教訓だ。
このように考えると、全域的最大値に到達するのがいつも最善となる。だが、それは常に真実とはかぎらない。
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