「成功したのは実力のおかげ」と考える人や「失敗したのは自分のせい」と考える人は、なぜ偶然の影響を無視してしまうのか
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私たちは成功を目の当たりにすると過去を振り返って理由を推測しがちだそうです(写真:Fast&Slow/PIXTA)
あなたの人生は偶然がすべて。この世界は成り行きの産物であり、ありとあらゆる物事を、偶然が支配している。成功や失敗も、進化も歴史も、小さな偶然の積み重ねに左右されている。なのに、なぜ私たちはそこに理由や目的、秩序があると信じてしまうのか? このような世界を生きることに、どんな意味があるのだろうか?
私たちは何もコントロールしていないが、あらゆることに影響を与えていることに気づかされ、静かな感動を呼ぶ書、『「偶然」はどのようにあなたをつくるのか:すべてが影響し合う複雑なこの世界を生きることの意味』より、一部抜粋・編集のうえ、お届けする。
大富豪になれたのは運のおかげ?
知能や技能や勤勉さなども含め、人間の特性のほとんどは、Uの字をひっくり返して押し潰したようなガウス曲線(ベルカーブ)に沿って正規分布する。それとは対照的に、富は正規分布していない。
冪(べき)乗則に従い、パレート分布を見せる。つまり、ほんのひと握りの人が世界の富の大部分を支配している、ということだ。
あなたは、身長が自分の5分の1しかない成人や5倍もある成人に出会うことは絶対にないが、今日、世界一の金持ちは平均的なアメリカ人の100万倍以上豊かだ。
だから、あなたよりもわずかに頭の良い人は、あなたよりもわずかに豊かになる代わりに、100万倍豊かになりうる。
これが、ときに「ファット・テール(裾の重い分布)」と呼ばれるものの世界であり、不確実性科学の研究者ナシーム・ニコラス・タレブが著書『ブラック・スワン』でそれを生き生きと描いている。
だが、そのような極端な富が、才能の賜物(たまもの)ではなく、普通なら運と呼ぶようなランダムな要因のせいだとしたらどうだろう?
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