備蓄米を放出したのに高すぎる…コメ価格高騰がいつまでも終わらない根本原因
実際にコメ不足を受けて、2025年3月には日本で最初にコメが収穫できる沖縄県石垣島で争奪戦がすでに始まっている、と日経新聞も伝えている(「迫真 コメ、クライシス」日経新聞2025年5月19日朝刊)。6月の収穫期前後にコメを確保するために、これまで付き合いのなかった業者が稲作農家に大量に押し寄せている。「いくらでもいい値が通る」状態が続いていると報道されている。コメ農家にとっては長年待ちわびた状況かもしれない。
しかしその一方で、コメ農家の未来はやはり厳しいものがあると言わざるを得ない。トランプ大統領が、アメリカ産のコメの輸入自由化を求めており、政府は拒絶する構えでいるが、どこまで譲歩すればいいのか、今のところまだ不透明だ。仮にコメが自由化すれば、世界一高いと言われる国内産のコメは格安の輸入米に凌駕されてしまう。日本の高いコメは、簡単に外国産に売り負けてしまうわけだ。
自民党は日米関税交渉で、コメの輸入拡大に大きな抵抗を見せている。「食料安全保障」を盾にコメの輸入自由化には断固反対していく姿勢を鮮明にしている。もともと日本は関税のない「ミニマム・アクセス米」を毎年77万トン程度、海外から輸入している。
この輸入量を超えた場合は、1キログラムあたり341円の高い関税を課している。全国の農家の票に頼る自民党としては、コメの輸入はまさに自民党政権の崩壊につながるからだ。夏の参院選を前に、正念場と言っていいのかもしれない。
主食を守れなかった政府の責任は重い?
問題は、こうした食料安全保障の考え方が、もはや通用しなくなりつつあると言うことだ。コメだけは潤沢にあり、それ以外の食料品については輸入依存度を高め、いざとなったらコメと芋を主食として国民を食べさせていくという食料安全体制も、根底から覆ることになるかもしれない。
なぜ、日本のコメがこんなに高くなってしまったのか。単純に農林水産省とJAが主導して減反政策を続け、コメの価格を支えてきたからだ。コメの価格を支えるために、余ったコメを輸出せずに備蓄して、さらに補助金を与えてコメの生産調整を行った。コメが潤沢にあるときはそれで構わないが、気候変動や今回のような期待インフレで、コメの値段はあっけなく高騰した。
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