備蓄米を放出したのに高すぎる…コメ価格高騰がいつまでも終わらない根本原因
もともと日本のコメ農家は、政府が2017年まで実施してきた減反政策によって補助金を受け取ることで稲作を続けてきた歴史がある。2018年以降は「生産目標の通知」という形で、実質的な減反政策を続けてきた。
なぜ、政府は現在も減反しているかといえば、コメの価格が決まるメカニズムが歪んでいるからだ。その背景にはJAの存在がある。もともとコメは1970年代前半までは、ほぼ100%を指定集荷業者となっていたJAが扱っていた。そして現在でも、生産量全体の約40%に該当する部分をJAが扱っている。
本来、コメの販売価格は1972年に初めて自由化された。農家が自由にコメを販売できるようになったのは、戦前からあった「食糧管理法」が「新食糧法」に切り替わった1995年からだ。コメを消費者に販売する場合も認可性が続き、自由化されたのは2004年の食糧法改正からだ。コメの流通は自由化されて、民間業者が自由にできるようになった。それまでコメの流通や販売を一手に引き受けていたのはJAである。
自由化されて20年も経過するのに、JAが40%のコメを取り扱ってきたことでもわかるように、農水省とJAの癒着はずっと指摘されてきた。備蓄米の買い入れとミニマム・アクセス米の取引については、政府がいまだに関与しているものの、それ以外は民間業者が取り扱っていることになっている。
長年の減反政策の付けを支払わされる?
こうしたコメの流通・販売が不透明な状況の中で、政府はコメ農家を守ると称して実質的な「減反政策」を続けてきた。毎年、3000億円前後の財政負担をして、農家に補助金を支払って、生産を減少させ、消費者に高いコメを買わせる政策だ。
本来ならば、コメを大量に生産して輸出に回せばいいのだが、日本のコメは量販市場では価格競争力がなく売れない。輸出するほど大量のコメを毎年生産していれば、食料危機の際には輸出するコメを国内向けに回して食べればいいのだが、政府はコメの価格を維持するために備蓄米を利用してきた。
減反政策そのものは、2017年に廃止された政策だが、その後も生産量も制限するような数値の提示や「転作補助金」を拡充する方法で、実質的な減反が現在も続いている。そんな中で起きたコメ不足、コメ価格高騰だが、農水省も、JAも、コメは不足していないと主張している。確かに、コメの全体量としては、備蓄米などの放出によって不足しているとは考えにくいのだが、商品の価格は流通の状況や期待インフレによって大きく変わってくる。
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