「フランス・ベストシェフに選ばれた日本女性」ロックダウン、共同経営者との決別を経て、厨房設備のない小さな店で《再出発》した理由
前のお店のことで一緒に怒り、戦ってくれた夫は、2020年6月、脳卒中で倒れてしまった。有里さんは、「会社のことと旦那さんの病気。その時はちょっと地獄でした」と振り返る。夫は後遺症を克服し、最近やっと以前のように笑い合えるようになったそうだ。「私がフランスに来てから、夫は全面的に陰から支えてくれました」と有里さんは語る。
人生は限られている、好きな時間を過ごしたい
現在、地元メディアの取材はすべて断っている。なぜなら昔の客が来ても、今のお店では以前のようなエレガントなサービスはできないから。口コミで来る客が多く、そういった縁が一番なのだという。有里さんは「ミシュランは狙っていない」と断言する。

「大変だった過去があるから、好きな人達や仕事に囲まれた今の幸せをしみじみ感じます。残された人生は限られているので、なるべく好きな時間を過ごしたいです。そのためには体調管理や最低限のお金も現実的に大切。バランスの取れた生活を目指しています」と有里さんは語る。

困難も多いが、その過程も楽しんでいるという。16歳で実家を飛び出した有里さんだが、父とは離婚を機に関係を修復した。つい1カ月前には、長らく疎遠になっていた母親に連絡を取ったそう。「お互い年を取ってきたので」と有里さんは穏やかに微笑んだ。
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