「フランス・ベストシェフに選ばれた日本女性」ロックダウン、共同経営者との決別を経て、厨房設備のない小さな店で《再出発》した理由
ランチは満席だった。この日は「友人のすすめで来た」という初見客が多く、「日本大好き」というカップルは「美しい料理に満足」と微笑む。

有里さんは、季節の食材を扱うのが楽しくてたまらないという。「自分で新しい食材を買ってきては、家で食べてみて『これはこういう味か』『この食材はうまく扱えなかったけれど、来年こそは』という感じです」と目を輝かせて話す。
有里さんが普段食材を仕入れる常設市場に立ち寄ってみると、皆、笑顔で写真に収まってくれた。良い関係を築いているように見受けられた。

離婚を経て憧れのフランスへ
有里さんが料理人として歩み始めたのは20歳のとき。
16歳のときに両親の離婚問題に苛立ちを覚えて高校を辞め、1人で自活生活をスタートした有里さんは、20歳で結婚。当時の夫と小さなバーを開き、そこで食事メニューを担当したのがキャリアの始まりだ。
当時の口コミを見ると、ビーフシチューやカツサンドが人気で、盛り付けの美しさも評判だった。
しかし仕事に忙殺され、夫婦関係は次第に上手くいかなくなっていく。そして12年間の結婚生活に終止符を打った。
32歳になっていた有里さんは、離婚を機に行動を起こす。「憧れのフランスに行こう!」と。というのもバーで料理を作り始めてから、フランスで料理を学ぶのが夢になっていたからだ。フレンチシェフ長尾和子さんの著書『リヨン料理ア・ラ・メゾン』はボロボロになるまで読み込んだ愛読書である。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら