自由貿易は確かに一見、工業力の高い国に利益をもたらすように見えるが、実際にはそれぞれの国が他国に負けない得意分野に特化することで、その分野を伸ばせば、お互い発展できる可能性がある。
しかし、これはあくまで理論の上のことであり、実際にはイギリスは各国の経済を、その得意分野でさえ駆逐していったのである。このことは、10年ほど前に日本でも議論になっていたTPP(環太平洋パートナーシップ協定)の際に、何度も議論になったことである。
米ソ対立が生みだした保護貿易
実際、GATTはあくまで自由貿易を目指すというだけで、実現されたわけではない。それは、1949年以後ソ連・東欧という社会主義経済圏、COMECON(経済相互援助会議)が成立し、米ソの冷戦が起こり、その対立の中で資本主義市場も保護貿易を実施せざるをえなくなったからである。
まがりなりにも実現されたのは1952年に成立したECSC(欧州石炭鉄鋼共同体)の中だけであり、それが現在のEUへとつながる道をつくりあげたのである。
1991年にソ連が崩壊し、アメリカを中心とする体制が再び力をもつに至り、GATT体制に代わっていよいよ1995年WTO(世界貿易機関)が創設され、自由貿易が促進されるようになる。グローバリゼーションという言葉がもてはやされたのは、この頃のことであった。当然ながら、アメリカもその一員である。
そのアメリカが、突然WTOの「横紙破り」を行ったのである。トランプには、TPPからアメリカを撤退させた過去がある。関税障壁を設け、自国製品を外国製品から守るという単純な発想が、彼にはひとつの信念とししてあるのだ。
トランプの今回の関税引き上げは大統領令(Executive Order)であり、アメリカ議会を通過した法律ではない。だから、いかようにでもなる代物だが、世界経済に与えたショックは計りしれないものであった。なるほど、どの国でも自国製品を守るために関税をかけている、その関税率を一方的に上げるというのは常軌を逸している。
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