「敷居の高いイメージ」を払拭、食のアミューズメントパーク化へ
ここで少し、しゃぶ葉の歴史を振り返りたい。
その原点は2007年、横浜に開業した1号店にある。当時、しゃぶしゃぶといえば「敷居の高いイメージ」があったことから、「お手頃な価格で、より多くのお客様にしゃぶしゃぶの楽しさを知っていただきたい」と、主にファミリー層をターゲットにした業態開発がはじまったそうだ。
その最中に、「外食でしか味わえない体験を求められるお客様が増えている」という市場変化にも着目。だしやたれ、新鮮な野菜や薬味をバイキングスタイルにして「自分好みの味」にアレンジできるだけでなく、ワッフルやソフトクリーム、綿あめやクレープなど「作る体験」を重視した「食のアミューズメントパーク」としてのポジショニングを明確にしていったのだ。

昨今のしゃぶ葉の売上高推移を見ると、着実な成長軌道に乗っていることがわかる。売上高は2018年の291億円から、2023年には419億円へと大幅に伸長。2024年には500億円を超えた(同社への取材による)。
コロナ禍の2020年、2021年は一時的に落ち込んだものの、その後は急回復。冒頭に述べた通り、現在は全国に300店舗を展開するまでに成長した。今後についても、「全国の皆様に豊かな食体験をお届けできるよう、出店を進めてまいります」と、積極展開に意欲を示している。

「カスタマイズ×体験価値」が生み出す競争優位性
しゃぶ葉の成功の背景には、いくつかの重要な要素が絡み合っている。第1に、「敷居が高い」というしゃぶしゃぶのイメージを覆し、カジュアルな形で提供したこと。第2に、単なる「食事」ではなく「5万通り以上」というカスタマイズ性を前面に打ち出したこと。第3に、「自分で作る」というデザートの体験価値を重視したこと。そして第4が、すかいらーくグループのスケールメリットを活かした価格競争力だ。

とりわけ「カスタマイズ性」と「体験価値」は、従来型の飲食店とは一線を画す特徴であり、SNSを通じた自発的な情報拡散を促す要素にもなっている。顧客自身が「自分だけの食べ方」を見つける楽しさ、そして、それをSNSで共有することで得られる帰属感。この循環が若年層を中心とした熱心なファン層を生み出し、業績を押し上げているのだ。
「食のアミューズメントパーク」というコンセプトが単なるキャッチフレーズではなく、明確な戦略とそれを支える仕組みとして機能している点が、しゃぶ葉の成功要因といえそうだ。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら