
三菱商事を中心とする企業連合が2021年に落札した洋上風力発電プロジェクトからの撤退をついに決めた。大型プロジェクトの頓挫は予期せぬ結果だったのだろうか。洋上風力が今直面している課題を全3本の記事でリポートする。
秋田県庁で9月4日に開かれた法定協議会。「絶対、撤退はないものと考えていただけに、今回の決定はたいへん大きな衝撃をもって受け止めている」。秋田県の神部秀行副知事は困惑の声を上げた。
8月27日、三菱商事が秋田県沖と千葉県沖の3海域における洋上風力発電プロジェクトからの撤退を表明した。それを受けて、同事業について地元関係者と話し合うために国と県が設置する法定協議会が、秋田と千葉の両県で開かれた。
協議会では三菱商事の岡藤裕治常務が撤退の経緯を説明。インフレや円安の進展などにより、応札時の2021年5月と比べて建設コストが2倍超に膨らんでおり、「誠に遺憾ではありますが、開発が困難であるという結論に至った」と述べた。
それに意見したのは、秋田2海域の協議会で座長を務める中村雅英氏(秋田職業能力開発短期大学校校長)だ。「今の説明を聞いても完全には納得できないと思う」と発言した。
ただ総じていうと、協議会での議論は淡々と進んだ。ある地元関係者は「三菱商事が無理と言うから無理なんだろう」と諦め顔だ。しかし、あるエネルギー業界関係者は、「まるで『インフレの被害者』と言わんばかりの説明だった」と切って捨てる。
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