日本人が知らないリバタリアニズムの教祖「アイン・ランド」の真実、アメリカの政治文化を形成してきたオブジェクティビズムとは何か

チャーリー・カーク事件の衝撃
保守活動家として知られるチャーリー・カークが銃撃によって命を失った。このニュースは、アメリカの分断を象徴する事件として衝撃をもって受け止められている。
カークは名門ウェスト・ポイント陸軍士官学校受験の浪人中の2012年に、実業家でティーパーティーの活動家ビル・モンゴメリの支援を受けて非営利団体「ターニング・ポイントUSA」を立ち上げ、小さな政府と自由市場、言論の自由、家族と信仰の重要性など保守的な価値を擁護した。
全米の大学で展開されたターニング・ポイントUSAの活動は若者の共和党支持を拡大。ラジオ番組でも草の根の保守や福音派、リバタリアンなど幅広い視聴者の共感を得た。何よりも、それまで白人中高年男性中心の印象が強かった保守・共和党のイメージを若返らせ、黒人やラテン系の若手リーダーのサミットも開催するなど多様な保守層の発掘にも貢献した。
カークはアイン・ランドのファンだった

カークは大統領本人含めトランプ陣営と密接に連携し、第二次政権誕生の立役者となったが、単なるMAGAのポピュリストにとどまらず、建国の理念を語り、私有財産や自由市場の重要性を説き、保守の理想を生き返らせた。近年は家族や信仰についての主張が目立ったが、活動開始当初は#BigGovernment Sucks!を掲げて大きな政府に反対するリバタリアンだった。
前回の記事では、同じく第二次トランプ政権の誕生に寄与したイーロン・マスクらテクノリバタリアンの思想的ルーツとしてアイン・ランドの哲学を紹介した。カークもまた、20世紀後半に若者や保守層に影響を与えたランドの大ファンであることを公言していた。

二度のトランプ政権を経てアメリカの保守は変革を迫られ、多様化した感があるが、ランドの作品はリバタリアニズムやアメリカ保守への入口であり続けている。
本稿では改めてアイン・ランドの思想のポイントを紹介し、アメリカの政治文化を形成してきたリバタリアニズムの系譜をたどっていきたい。
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