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日本人が知らないリバタリアニズムの教祖「アイン・ランド」の真実、アメリカの政治文化を形成してきたオブジェクティビズムとは何か

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「オブジェクティビズム」とは?

1957年、代表作『肩をすくめるアトラス』の発売に向けたランダム・ハウスの営業会議に登壇した際、営業マンから「一本足で立ってあなたの哲学のポイントを教えてください」と訊かれたアイン・ランドは次のように答えた。

「形而上学は客観的現実。認識論は理性。倫理は自己利益。政治は資本主義」

オブジェクティビズムと名付けられたランドの哲学は、この四つの柱で成り立っている。現実は客観的であり、人間の意識や信仰に影響されない。だが人間は合理的に現実をとらえられる。よく生きるには自分のために生きねばならない。そして資本主義こそが、唯一道徳にかなう社会制度である。

形而上学とはランドが唯一師と仰ぐアリストテレスに遡る存在や因果律についての学問だ。ランドは代表作の『肩をすくめるアトラス』で「矛盾律」、「二者択一」、「AはAである」といったギリシャ哲学の巨人が示した基礎原理を、二十世紀アメリカを舞台にした小説の形式で提示した。

この小説では、目の前の現実をありのままに合理的にとらえて経済活動を行う実業家と、そうした実業家たちを批判しながら兄弟愛と世界平和を唱えて何も生み出さず、「絶対的なものなどない」と主張する相対主義者のエセ文化人とが対照的に描かれている。

グリーンスパンとの接点

客観的な現実が存在し、合理的に認識可能とは当然のようだが、当時流行りの相対主義に戸惑う若者たちには新鮮だった。元FRB議長のアラン・グリーンスパンは26歳の経済学者だった1952年に、ランドのマンハッタンのアパートでの集いに参加した。

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