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クリス・パッテン卿「アメリカが誇る"ソフトパワー"は解体しつつある」「今後、アメリカ主導の国際秩序を再構築するには時間が必要だ」

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トランプ大統領は、彼が聞きたいと信じていることを何でも熱心に口にするおべっか使いの高官に囲まれている(写真:ブルームバーグ)

17世紀、ピューリタンの指導者であり、マサチューセッツ湾植民地の創設者であるジョン・ウィンスロップは、新しい入植地を「丘の上の都市(a city on a hill)」と表現した。ウィンスロップはこの入植地を、北アメリカ国内はもとより世界各地にインスピレーションを与えるような、輝く模範となる共同体として構想した。

有識者による政治・経済コラムを翻訳掲載。週刊東洋経済掲載分だけでなく、多くの選りすぐりのコラムもタイムリーにお届けする。バックナンバーはこちら

時を経て、ウィンスロップの言葉はアメリカの政治的レトリックに繰り返し登場するようになった。

ジョン・F・ケネディとロナルド・レーガンの両大統領は、ウィンスロップの「丘の上の都市」という比喩を用いて、アメリカを定義する価値観と例外主義を明確にした。このビジョンは否定されるどころか、世界中の人々の共感を呼び、その多くはアメリカを、民主的で法の支配に支えられた、自由で開かれた社会の模範であり、見習うに値すると考えた。

ソフトパワーがアメリカの地位を強化した

第二次世界大戦後の数年間、アメリカは、専制政治に悩まされていた世界で自由が何を達成できるかを示した。この時期、アメリカの指導者たちは、平和と繁栄の時代を切り開く国際秩序の形成に重要な役割を果たし、自国だけでなく多くの国に恩恵をもたらした。

戦後、アメリカが主導した国際秩序は、おそらくソフトパワーの最たる例であろう。ソフトパワーとは、武力ではなく、理想、文化、価値観を通じて他国に影響を与える国の能力のこと。他国の成功を支援し続けることで、アメリカは世界的な地位を強化し、永続的な偉大さを達成した。

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