「人間はなぜ働き続けるのか?」休みなくひたすら作業…産業革命で生じた過酷すぎる労働環境

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もう1つは、労働者が団結して使用者と団体交渉をし、その際にストライキなどの団体行動を行うことを認める「集団的自由」です。これは、労使間の力関係の格差のなかで事実上自由を奪われていた労働者に対し、集団として自由を行使することを認め、労使間の事実上の力関係の格差を是正しようとするものでした。

工場労働者の声が政党や議会に届くように

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このような形で、市民革命がもたらした個人の自由を修正し、労働者に集団的な保護・自由を与える労働法が誕生した背景には、市民革命がもたらしたもう1つの重要な側面である国民主権=民主主義という法原理があったことも、歴史的には大切な点です。

19世紀に産業革命=工業化が進展し、過酷な状況で働いていた工場労働者の数が増加していくなかで、フランスでは1848年、ドイツでは1867年、アメリカでは1870年に、納税額等の制限のない普通選挙制度が導入されました(当時はまだ成人男子に限定されてはいましたが)。

この民主主義の基盤の拡大のなかで、数が増加していた工場労働者の声が政党や議会の場に届くようになり、労働者の置かれた状況を改善する法律(労働法)が制定されるようになったのです。

真 由「労働法って、市民革命がもたらした民主主義を基盤にしながら、市民革命の負の側面を修正していったんですね。歴史って複雑に絡み合ってるんですね」

水町 勇一郎 早稲田大学法学部教授

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みずまち ゆういちろう / Yuichiro Mizumachi

1967年佐賀県生まれ。90年東京大学法学部卒業。東北大学法学部助教授、パリ西大学客員教授、ニューヨーク大学ロースクール客員研究員、東京大学社会科学研究所教授などを経て、2024年度より早稲田大学法学学術院・法学部教授。専門は労働法学。働き方改革実現会議議員、新しい資本主義実現会議三位一体労働市場改革分科会委員、規制改革推進会議働き方・人への投資ワーキング・グループ専門委員、労働基準関係法制研究会参集者等を歴任。主著に『労働法〔第10版〕』『集団の再生――アメリカ労働法制の歴史と理論』『労働社会の変容と再生――フランス労働法制の歴史と理論』『パートタイム労働の法律政策』(以上、有斐閣)、『詳解 労働法 第3版』(東京大学出版会)、『労働法入門 新版』(岩波新書)がある。

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