
皇居の富士見櫓(写真: massyu / PIXTA)
NHK大河ドラマ「べらぼう」では、江戸のメディア王・蔦屋重三郎(つたや・じゅうざぶろう)を中心にして江戸時代中期に活躍した人物にスポットライトがあたっている。浄瑠璃の大夫で「富本節」を世に広めた富本豊志太夫(午之助)もその一人である。連載「江戸のプロデューサー蔦屋重三郎と町人文化の担い手たち」の第10回は、蔦屋重三郎もその人気にあやかって出版物を出した富本豊志太夫(午之助)について、浄瑠璃の世界と合わせて解説する。
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大衆芸能として愛された「浄瑠璃」
2024年の大河ドラマ「光る君へ」では、「散楽」(さんがく)という伝統芸能がストーリーを展開するうえで、重要な役割を果たした。
まひろ(紫式部)が屋敷の帰りに散楽を観にいくと、そこには、右大臣家の三男・三郎(藤原道長)も訪れており、幼少期に出会っていた2人は再会。物語が動き出すこととなった。
曲芸や幻術、歌舞や音楽、物まねなど、雑多な内容を持つ「散楽」は、奈良時代に中国大陸からもたらされた。次第に日本の芸能と混じり合いながら、滑稽な物まねや寸劇がメインとなっていき、「猿楽(さるがく・さるごう」と呼ばれるようになる。
そして室町時代には、猿楽に歌や舞、そしてリズムを取り入れた「能楽」が、観阿弥・世阿弥親子によって大成していく。能楽は、とりわけ猿楽の滑稽な要素が発達した「狂言」とともに、鎌倉時代から室町時代を経て、江戸時代に至るまで広く行われることになる。
だが、能楽や狂言の鑑賞者は、公卿や武家など上流階級に限られており、奈良・平安時代の散楽のように大衆を楽しませるものではなくなっていた。
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