江戸で大ブーム「浄瑠璃の富本節」誕生した背景。蔦屋重三郎も早速目を付けて出版に乗り出す

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そんな嗅覚が働いたのだろう。重三郎は、富本節の音曲の詞章を記した「正本」や、練習用に節付をした稽古本を次々と刊行している。

安定した売り上げが見込めると考えた

浄瑠璃は新作が発表されるため、シリーズものとして定期的に刊行することができる。『吉原細見』と同じく、安定した売り上げが見込めるラインナップとして、富本節のテキストは重宝されることになった。

大河ドラマ べらぼう 蔦屋重三郎 富本節
『富本節』(東京藝術大学附属図書館所蔵)(出典: 国書データベース

そうして富本節ブームにも便乗しながら、重三郎は天明3(1783)年にいよいよ吉原から飛び出して、日本橋へと進出。一流版元への道をひた走っていくのだった。


【参考文献】
若月保治『人形浄瑠璃史研究 人形浄瑠璃三百年史』(桜井書店)
内海繁太郎『人形浄瑠璃と文楽』(白水社)
岩沙慎一『江戸豊後浄瑠璃史』(くろしお出版)
『よだれかけ』(東京大学総合図書館所蔵)
『江戸砂子温故名跡誌』(学習院大学文学部日本語日本文学研究室所蔵)
『富本節』(東京藝術大学附属図書館所蔵)

真山 知幸 著述家

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まやま ともゆき / Tomoyuki Mayama

1979年、兵庫県生まれ。2002年、同志社大学法学部法律学科卒業。上京後、業界誌出版社の編集長を経て、2020年独立。偉人や歴史、名言などをテーマに執筆活動を行う。『ざんねんな偉人伝』シリーズ、『偉人名言迷言事典』など著作40冊以上。名古屋外国語大学現代国際学特殊講義(現・グローバルキャリア講義)、宮崎大学公開講座などでの講師活動やメディア出演も行う。最新刊は 『偉人メシ伝』 『あの偉人は、人生の壁をどう乗り越えてきたのか』 『日本史の13人の怖いお母さん』『逃げまくった文豪たち 嫌なことがあったら逃げたらいいよ』(実務教育出版)。「東洋経済オンラインアワード」で、2021年にニューウェーブ賞、2024年にロングランヒット賞受賞。
X: https://twitter.com/mayama3
公式ブログ: https://note.com/mayama3/
 

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