東洋経済オンラインとは
ライフ #長寿の金言

「自宅の6畳を改装」66歳で寿司屋を開業したワケ 定年後、一から修業した元広告マンの充実した日々

9分で読める
2/5 PAGES
3/5 PAGES
4/5 PAGES
5/5 PAGES

「気楽な貸し切りですので、普段はお寿司屋さんに連れていけない小さなお子さん連れの方もいらっしゃいます。飽きちゃったらリビングでテレビを見ておいでって、ここではそれができるので」

出張寿司で伺うお宅には在宅介護中の高齢者がいて、家を空けられないという家庭もある。

「握りたてのお寿司を在宅介護中のおばあちゃんのベッドに運んでもらったりすると、本当にうれしい。老人ホームに行ったときは皆さん全員が、おいしいおいしいと言ってくれて、大喜びでした。そして昭和一桁、大正生まれの皆さんは、実にお寿司のネタに詳しいんです。旬の味も知っている。やっぱり日本人はお寿司が大好きなんだなあと実感しました」

衝立の向こうにはキッチンが設置されている(撮影/大澤誠)
河野さんが握った寿司(撮影/大澤誠)

週2日の実働で充実した日々

河野さんの大将歴も14年。出張寿司と貸し切りを合わせて年平均50回、週1回のペースで予約が入る。1回の予約で河野さんの実働は仕入れと仕込みで1日+当日1日の2日間が基本だ。タイムスケジュールを細かく書き出して落ち度がないように進めていく。

(撮影/大澤誠)

出張寿司はお客さんのプライベートの場で握り、貸し切りの個室はお客さんとの距離が近い。河野さんは自分の立場を、おいしいものを食べていただくための給仕人と心得ている。

この連載の一覧はこちら

「なるべく静かに、話しかけられないかぎり自分からは声はかけちゃいけないと思っています。場を和ませるために、皆さんが笑っているときは、僕も握りながら一緒にフフッと笑ったりもしますが、それもできるだけ慎むようにしています」

自分は人にふるまえるもの、喜んでもらえるものを持っているということが、こんなにも自分自身の喜びにつながるものかと思う。そして年齢を重ねるごとにその喜びは深くなっていくと、河野さんは言う。

「お寿司は生きているうちは握り続けたい。僕が握ったお寿司で人が喜んでいる顔が見たいし、おいしいという声が聞きたいんですね。人生の後半戦にこの商売を選んで本当によかったなと思っています」

こちらの記事もおすすめ

あなたにおすすめ

ライフ

人気記事 HOT

※過去1週間以内の記事が対象