「自宅の6畳を改装」66歳で寿司屋を開業したワケ 定年後、一から修業した元広告マンの充実した日々

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「結果的に寿司屋を始めたので修行といえばそうなるけれど、そもそも東京すしアカデミーに通ったのは、おいしい寿司を自分で握ってみたいという20年来の夢をかなえるため。習い事感覚でした。開業しようなんて、これっぽっちも考えていませんでした」と、河野さんは当時を振り返る。

父親の影響で、子どもの頃から寿司が大好きだった河野さんが、自分で寿司を握ってみたいと思ったきっかけは40歳の頃。仲間6人と共同購入した30フィートの中古クルーザーで、行きつけの寿司屋の大将を誘って釣りに出た。

「もちろん大将には釣った魚で寿司を握ってもらうことになっていました。でも、見事に1匹も釣れなかった(笑)。そうしたら、大将が『そうだろうと思ったよ』と言って、店で残ったシャリとネタを出してきて、その場で寿司を握ってくれたんです。残り物だけど食えよって」

握りたての寿司は、びっくりするくらいおいしかったという。感激した河野さんは、思わず大声を出した。

「大将、店で食べるよりうまいじゃない!」

「河野ちゃん、寿司はね、ネタがよくてシャリがうまければ、あとは握りたて。絶対に握りたてを食ったほうがうまいんだよ」と、大将は満足げな顔でうなずいて、こう付け加えた。

「河野ちゃんもやってみれば、握れるんじゃないの?」

船上の寿司の感動と大将のこのひと言が、河野さんの頭の中に深くインプットされてしまったのである。

出張寿司
クルージング船に出張して腕前を振るう河野さん。写真左は東京すしアカデミーの卒業生のアシスタントだ(筆者撮影)
寿司
河野さんが船上で握った寿司(筆者撮影)

シニアの受講者も多い「すしアカデミー」

河野さんが通った東京すしアカデミーの広報・鈴木祥高さんによると、河野さんのように定年後に自分で寿司を握ってみたい、あるいは開業したいという目的で受講する50〜70代の受講生も多いという。

受講生の7割は男性。

「お寿司は魚をさばいてシャリと合わせるというシンプルな料理。料理を日常的にしない方でも入りやすいジャンルなのだと思います」(鈴木さん)

確かに河野さんも料理の素地はほとんどなし。作れるのは好物のチャーハンくらいというレベルだった。それでも、職人の感覚的な技術や味の作り方を理論に基づいて指導する東京すしアカデミーの授業は性に合ったという。

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