このシンガーが成功を収めたのは、すべてのスポーツカーのベンチマークと見なされるポルシェをテーマとしたことにあるだろう。
ポルシェファンは世界中に数多く存在し、この964にしても5万台以上というスポーツカーとして法外な台数が製造され、いまだその多くが現役として活躍している。
幅広い顧客層を持ち、熱心なマニア層を持つスポーツカーのアイコンであることは、大きな強みだ。人とは違った「特別な911を持ちたい」と思うポテンシャルユーザーの数も多い。
もうひとつ。911は、発売当初から今に至るまで、不変のスタイリングテーマを持っていることだ。だから、初期型ナローボディのスタイリングも陳腐化せずに、現行モデルとは違った美しさを持って私たちを魅了する。

そんなクラシックが、現在の技術により新たな味付けをされたとすれば、それは魅力的ではないか。
「ポルシェが好きだという情熱で、私はシンガーを始めました。そのこだわりのためには、妥協しません。クオリティを向上させるために施設も絶えずアップデートを行い、現在では600名程がシンガーを作るために働いていますし、年間200台ほどの安定した供給も可能となりました」
今回、クラシックターボとDLSターボの日本におけるシェイクダウンのために来日したCEOのロブ氏は、そう語る。
日本ではラグジュアリー・スポーツカー販売の老舗であるコーンズ・モータースが輸入代理店を務めるというのも、レストモッド界が存在感を高めている証しだ。
奥山清行氏「少量生産スポーツカーの新しい道ができた」
ロブ氏と同じデザイナーとして交友のある日本のコーチビルダー、“Ken Okuyama Cars”を率いる奥山清行氏も、今回ロブ氏と一緒にサーキットでステアリングを握った。

「クルマの素晴らしさは想像以上でした。もはや新しいシンガーというブランドです。私たちコーチビルダーも新しいトレンドの中で、より高いニーズに応える必要があることを痛感します。それと同時に、少量生産スポーツカーの新しい道ができたという喜びも感じるのです」
奥山氏は、そう感想を述べた。手に入れるには億単位のコストがかかるが、シンガーの手掛けるクルマが伝説的になることは必須だ。レストモッドのひとつの頂点が、ここにある。
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