富裕層の新トレンド「レストモッド」とは何か? 究極の「レストア・ポルシェ」を作るシンガー

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そういう「自らの手でスポーツカーを操りたい」というニッチなニーズに応えるには、このレストモッドはぴったりでもある。

もちろん、それと同時に「取り扱いが難しい」と今までクラシックカーを敬遠していた層も動いたことは、いうまでもない。

「930 Turbo」を称え、ほとんどゼロから再構築

では、先のシンガーについて、詳しく紹介しよう。シンガーは、数多くのレストモッドの中でも、最も注目されているビルダーだ。

正式にはシンガー・ヴィークル・デザインといい、2009年にポルシェ911を熱愛するミュージシャン、ロブ・ディキンソン氏が創立した。

彼らは空冷のポルシェ911、それも「964」と呼ばれる1989年から1994年の間に製造されたモデルをベースとして、まったく新しい個体へと仕立てる。

ワイドボディ化されても、あくまでも「930 Turbo」のムードは崩さない(写真:Singer Vehicle Design) 
ワイドボディ化されても、あくまでも「930 Turbo」のムードは崩さない(写真:Singer Vehicle Design) 

どのように依頼するかというと、オーナーはまず自前の964をドナーカーとしてシンガーへ提供する。

その場合、市場に多くあるティプロトニック(AT)モデルでも構わない。なぜならトランスミッションも、自社で組み上げられるマニュアル・トランスミッションに取り替えられるからだ。

そして、シンガーのワークショップにてドナーカーは完全に分解される。その後のアッセンブルで使用されるのは、主にシャーシ、エンジンブロック、ドア、ピラーで、他の部品はほぼ使用されない。

そのシャーシにも十分に手が加えられ、アウターパネルはCFRPが多用されるから、ほとんどゼロから再構築されるといっても過言でない。

現在、受注を受けているサービスは、「クラシックターボ」と「DLSターボ」という2つ。

クラシックターボは、空冷ポルシェのアイコンの1台でもある、1975年に発売された「930 Turbo」を称えるものであり、ブロック以外はすべてオリジナルとなる、2バルブヘッドを持つツインターボエンジンが搭載される。

6速マニュアルトランスミッションと組み合わされるエンジン(写真:Singer Vehicle Design) 
6速マニュアルトランスミッションと組み合わされるエンジン(写真:Singer Vehicle Design) 

DLSターボも同じツインターボであるが、こちらは4バルブ仕様。1977年のSCCAトランザムシリーズで圧倒的な勝利を遂げた、ポルシェ「934/5」のDNAを現代につなぐ架橋として誕生し、最高出力700hp+を誇る。どちらも台数限定のサービスだ。

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