全員「元会社員」ケーキ職人の平均年齢は75歳 1978年創業の味を守り続ける中目黒「ヨハン」
「勝っている時は作戦を変えちゃいけないんですよ。今までちゃんとやってこれたんだから、このままでいいんじゃないですか」
もちろん、なにもかも現状維持というわけではない。ここは変えるべきだと思ったことは、ハッキリと口にする。例えば、博子さんは現場に任せるタイプで、どのケーキを1日に何個作るのかは職人たちに委ねられていた。そのため、予測が外れて在庫が積みあがることも少なくなかった。
そこで和田さんが目を付けたのは、店頭で接客をしている女性陣。売り子としての経験から、何曜日に、あるいは季節によってなにがどれぐらい売れるのか、精度の高い情報を持っていた。女性陣の見立てに合わせて製造スケジュールを立てようと伝えると、職人たちは抵抗した。
「突然アメリカからやってきて、こいつなに言ってんだと思ったでしょうね(笑)」
この時、和田さんは「失敗しても僕のせいだから」と、半ば強引にスケジュールを決めた。すると、みるみるうちに在庫が減った。このような改善を積み重ねて、「なんとなく信じていただけるようになったのかな」。
経営はトントンでいい
職人たちには「行間を読んでくれるだろう、気持ちをくんでくれるだろうという期待はしないでください。言葉にして言ってくれないとわからないから」と伝えている。一方で、ついアメリカ式のストレートな物言いをしてしまい、「今のいい方はよくなかったかな……」と反省することも多々あり、いかにして自分の意図を伝えるのか、試行錯誤が続く。
名刺の受け渡し方、印鑑の扱いなど日本特有のビジネス習慣も知らないことばかりで、「いまだにアメリカから日本に出張に来ている感じ」と表現する和田さん。それでも、ヨハンの経営には手ごたえを感じている。
「父はこの店がトントンでいいんだって言っていたし、僕もそれでいいと思います。これまで通り家族的な雰囲気のなかで、潰れないように頑張るだけですよ。ありがたいことに、お客さんのおかげで今もちゃんとトントンですし。誰かしら、空の上から見守ってくれているんじゃないんですか」
アメリカ帰りのオーナーと、平均年齢75歳の職人たち。創業から47年変わらないヨハンの味は、彼らが守り続ける。
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