夏期講習から通いはじめた予備校では、作品を作っては講評されることの繰り返しで、上手な作品の順に「上段」、「中段」、「下段」と3段階の評価がある中で、家原さんの最初の半年はほとんど下段止まりでした。
家原さんが目指した、東京藝大のデザイン科(2024年度)の入試は、以下の通りです。
「全部上段なら受かる可能性が高いのですが、下段しか取れなくて、ほぼ間違いなくもう1浪はするだろうなと思っていました。うまい絵の隣に自分の下手な絵が並べられることで、現役で経験した受験以上に周りとの差が明確にわかる感覚があり、毎日自分の無力と価値のなさを突きつけられるようでした。理想と現実のギャップが本当につらくて予備校をポツポツ休むこともあり、この最初の半年が、浪人時代でいちばんつらい時期でした」
家族の後押しもあり、2浪を決意
結局、この年は東京藝術大学美術学部デザイン科を受験したものの、1次試験のデッサンでABCD評価の最下位の評価であるDを取り、不合格。それでも、家族の後押しもあり、2浪を決断します。
「実は静岡大学を休学して美大受験の浪人をすると決めたとき、家族と約束をしました。応援はするけど、うちは離婚して、母子家庭で余裕がないので2浪目の受験で終わらせてほしいと。だからこの年落ちるのは家族も想定していましたし、私も家族も、次の1年がラストチャンスだと思っていました」
2浪目も1浪目と同じく、朝〜夕方まで御茶の水美術学院に通った家原さん。この年の家原さんは、高校まで美術を学んでいないハンデを埋めるため、ひたすら先生に質問しに行きました。そのかいもあってか、作品も中段に並ぶようになりました。
「正しい鉛筆の削り方のような、多くの美大受験生は高校で教わるような超基礎的なことが抜けていたので、基礎知識の抜けを埋めるためにひたすら質問をしていました。受験生の中でいちばんくらい、先生に質問しにいったと思います」
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