前年度と比較すると、やや精神的には安定したというこの年の受験。秋には「形を捉えるのが苦手」という自身の弱点に気づき、逆に「光や質感を捉えるのに長けている」特性を生かすために、石膏デッサンから構成デッサンに受験科目を変更します。変えた直後の10月には一時的に成績が下がりましたが、12月ごろには作品がついに上段に乗るようになりました。
「藝大の入試は1次試験が2月末なので、この年はギリギリ(合格に間に合う)かなという感覚でした。受かってもおかしくないと思っていました」
この年は東京藝術大学の美術学部デザイン科と、金沢美術工芸大学の視覚デザイン専攻を受験しました。藝大は前年度にD評価だったデッサンでB評価をもらい、無事1次試験を突破。金沢美術工芸大学にも合格しました。
2浪の藝大受験では勝負の2次で不合格
しかし、藝大受験は勝負の2次試験で惜しくも不合格になってしまいました。
「デッサンがB評価だったのですが、2次試験の色彩がD評価で、立体がC評価でした。評価がADCとか、BCCだったらギリギリ受かっていたんじゃないかと思います。親としては、金沢のほうで合格をいただいたから、そこに進学するだろうとほっとしていたと思いますが、私は藝大への未練が残ってしまったんです。
親に藝大に行くために3浪したいということを伝えたら、怒っているというより、もう、叫んでいました。受かるかわからない藝大受験のために3浪するなんて、なぜだと。心配で祖父は泣いていたそうです。
学費は自分で稼ぐということで受験を認めてもらったのですが、そこまで家族に迷惑をかけてまで藝大受験をするのは本当に申し訳なかったです。それでも、どうしても諦めきれませんでした」
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