アメリカLNG事業で問われるメガ銀、損保の責任 現地住民が環境、人権への負の影響を指摘
なお、三菱UFJはリオ・グランデLNG事業への融資について、「赤道原則に則って環境・社会配慮確認を行い、その結果も踏まえて与信判断を実施している」と東洋経済に答えている。
また、一般論として融資を検討する際には、「MUFG環境・社会ポリシーフレームワーク」などに則った対応もしているという。同ポリシーフレームワークでは、「ファイナンスに際して特に留意する事業」として、「先住民族の地域社会へ負の影響を与える事業」などを例として挙げている。
SOMPOHDは一般論として、東洋経済の取材に次のように答えている。
「環境・社会に負の影響を与える可能性のある保険引き受け案件に関しては、ユネスコ世界遺産保護条約やラムサール条約で保護対象となる自然や文化遺産を破壊するとされる事業などを対象となる事業として特定し、環境や社会に及ぼす悪影響を評価している」
「必要に応じてサステナビリティ部門が、営業部門、アンダーライティング部門とESG(環境・社会・ガバナンス)の観点から対応事項等について協議を行うなど、慎重に対応している」
しかし今回、来日した関係者は、赤道原則や環境・社会ポリシーフレームワークなどの社内の投融資、保険引き受け方針に照らした場合、先住民や環境などへの配慮がきちんとなされておらず、メガバンクの融資や大手損保会社の保険引き受けそのものに問題があると指摘している。
先住民にとって、LNG基地周辺は聖地
今回、先住民の代表として来日したフアン・マンスィアス氏はテキサス州のカリゾ・コメクルド族の両親の元に生まれ、現在、カリゾ・コメクルド族のチェアマン(長)を務める。
マンスィアス氏によれば、リオ・グランデLNG事業予定地に隣接するボカチカと呼ばれる地域はリオ・グランデ川の河口周辺に拡がるデルタ地帯で、「私たち民族創生の物語の中で、最初に女性が誕生した聖地だ」という。
カリゾ・コメクルド族は白人が入植する以前からアメリカとメキシコの国境を成すリオ・グランデ川に沿って移住生活を営み、LNG事業予定地の一帯では先祖の遺骨や埋葬品も発見されているという。
そうした聖なる土地を、地元自治体が先住民の了解なしにLNG事業会社にリースしたことで、カリゾ・コメクルド族の人たちは民族の存続が危機に瀕していると主張している。
先住民族の地域は2つのLNGプロジェクトおよびパイプラインによって寸断され、生活にも支障が生じかねないという。マンスィアス氏は、「メガバンクや保険会社の関係者には先住民族の歴史や権利を理解したうえで、責任ある行動をしてほしい」と語っている。
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