ガス計画乱立のフィリピン、問われる日本の責任 環境や漁業への悪影響懸念、日本に中止要請も
日本ではあまり知られていないが、フィリピンはベトナムと並び、LNG輸入基地やガス発電所などガス関連インフラの建設計画が目白押しだ。日本のエネルギー企業や総合商社、官民の大手金融機関も、投融資や技術協力を通じて関与を深めている。
フィリピンに本拠を置く環境NGOのCEED(Center for Energy, Ecology, and Development)によれば、世界で建設が計画されている新規ガス発電所の65%以上がアジアに集中。中でもフィリピンは計画されているガス火力発電所の設備容量で、ベトナムに次ぐ東南アジア第2位となっている。
フィリピンでのガス火力発電の計画規模は39基、約42.6ギガワット(約4260万キロワット)にものぼり、建設が計画されているLNG輸入基地の数は7施設、その設備能力は約2800万トンにもなるという。フィリピン政府は電力需要の増加への対応や、二酸化炭素(CO2)排出の多い石炭火力発電への依存度引き下げを目的としてガス火力へのシフトを目指しているが、過剰投資に陥りかねないリスクをはらむ。
プロジェクトが乱立、漁業などに悪影響も
建設計画の集中は、地域住民の生活や環境に大きな負荷を与えかねない問題となっている。
今回、来日したフィリピン・ルソン島中部バタンガス州の漁民連合で副会長を務めるマキシモ・バユバイ氏によれば、「バタンガス州では約20年前に最初のガス火力発電所が建設されてから海の汚染がひどくなり、漁業ができる場所も制限されるようになった。多くの漁民が生活の困窮に直面している。LNG輸入基地や新たな発電所の稼働で状況はさらに厳しくなる」という。同漁民連合はバタンガス州の漁民約1万人で組織されている。
首都マニラから南へ約80キロメートルと比較的近距離にあるバタンガス州は、フィリピンでも特にガスエネルギー関連施設の建設計画が集中している地域だ。バタンガス州ではすでに1基のガス火力発電所と2つのLNG輸入基地が稼働。さらにガス火力発電所9基、LNG輸入基地4施設の建設が計画されている。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら