アメリカLNG事業で問われるメガ銀、損保の責任 現地住民が環境、人権への負の影響を指摘
“Drill baby drill”(化石燃料を掘って掘って掘りまくれ)は、次期アメリカ大統領に就任するドナルド・トランプ氏のスローガンだ。しかし現在のバイデン政権の下でも、アメリカでは史上空前の天然ガスの増産が続いている。
ロシアによるウクライナ侵攻を機に、ロシア産ガスへの依存度引き下げを迫られたヨーロッパ各国がアメリカ産ガスの買い付けに殺到。テキサス州やルイジアナ州などアメリカ南部のメキシコ湾岸一体では、LNG基地の新増設計画が目白押しだ。
すべてのLNG基地が稼働すれば空前の規模に
アメリカでは現在、すでに年産約1億トン超の生産能力を有するLNG基地が稼働している。加えてアメリカ連邦エネルギー規制委員会(FERC)などによる許可済み(着工済みおよび未着工)のものとして約3億トンものプロジェクトが存在する。これらがすべて稼働するとアメリカは世界最大のLNG輸出国になる。とりわけメキシコ湾岸にはLNGプロジェクトの大半が立地し、海岸部を埋め尽くしつつある。
一方で反対する住民の声も高まっている。
天然ガスの生産や輸送などの過程では主成分であるメタンの一部が大気中に漏洩し、環境汚染や地域社会への悪影響が深刻な問題となっている。
ベンゼンなどの有害大気汚染物質の放出事故も後を絶たず、近隣地域では健康被害が多く報告されている。
また、LNG基地は黒人やメキシコ系などのマイノリティや先住民が多く暮らす地域に建設されることが多く、住民は爆発事故の危険と隣り合わせの生活を余儀なくされている。
そうした中、来日した環境・人権団体の関係者は、メキシコとの国境近くで計画されているリオ・グランデLNG基地およびテキサスLNG基地、リオ・ブラボー・パイプラインという3つの事業を挙げ、日本のメガバンクおよび大手損保会社による支援の中止や関与しないことを求めた。
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