一部の批評家によれば、中国の経済上の奇跡はあたふたと終わりを迎えようとしている。株価の乱高下と人民元相場の“驚くべき”下落は経済崩壊の予兆であり、ハイリスクな投資や高水準の政府債務が、数十年続いた急速な生産成長にブレーキをかけるというのだ。
ただ、最近ニュースをにぎわしてきた市場変動に短期的な変動以上の意味があるとの見方を信じるべき理由は、ほとんどない。
結局のところ、株価は経済動向の真の指標としてはお粗末なものなのだ。実際、中国のGDP(国内総生産)が力強く成長した2010~2013年に株価は下落していた。2015年前半になって株価は揺るぎ始めたが、経済の低迷はそれ以前に始まっていた。
労働市場は依然として健全
中国の成長鈍化の主因は、ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)の変化にある。過去の成功によって賃金が上昇したため、低コスト労働や技術的な追い上げによる急成長の余地が限られてきたことも一因だ。輸出や投資に関する指標などは15年の前半になって、一段と悪化している。
しかし、小売売上高や住宅関連など、ほかの重要な指標は上向いている。そして、おそらく最も重要なことだが、労働市場は今も健全で、2015年前半に720万人の新しい都市雇用(その多くはサービス業)を創出。同時に、賃金上昇が力強く続いている。今年の経済成長率は7%を下回るかもしれないが、政府目標の“7%程度”からかけ離れることはないだろう。
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