元安誘導でなく「容認」、人民元騒動の大誤解 本質は人民元の国際化に向けた改革の第一歩
景気の底割れを防ぐために通貨の切り下げに追い込まれた──。
中国が対ドルの人民元レートの目安となる基準値を、8月11日から3日間連続で切り下げたことについて、日本の報道は「輸出テコ入れの元安誘導」説の一色だ。だが事態はそう単純でない。
確かに中国の輸出は7月には前年同期比8.3%減少。1~7月でも同0.8%のマイナスである。しかし、一連の措置によって、元の対ドルレート基準値は4.5%切り下がっただけで、輸出増の効果は限定的だろう。
そもそも、リーマンショックがあった2008年以降、中国のGDP(国内総生産)成長率に対する輸出入の影響は、大きく縮小した。2014年の実質成長率7.4%への寄与は0.1ポイントでしかない。
10年間で6元台に切り上がった
では、中国人民銀行(中央銀行)は、何を狙ったのか。東短リサーチの加藤出社長は「人民元の国際化に向け、改革の第一歩を踏み出したということではないか」と見る。中国は2005年7月、人民元のドルペッグ(米ドルとの交換レートの固定)を見直し、現行の管理変動相場制に移行した。毎日、当局が定める基準値の上下0.3%内で変動を認める、というものだ。
それは人民元が不当に安く抑えられ、貿易不均衡を生んでいるという、欧米からの批判への対応だった。後に変動幅は拡大され、現在は2%まで広がっている。
基準値の算出方法が明らかでないことから、現制度も「事実上のドルペッグに近い」と見る向きは多い。それでも、開始時8.28元だった対ドルレートは、10年間で6元台に2元近く切り上がった。
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