厚生労働省が2024年5月8日に発表した統計は、もっと衝撃的でした。
「認知症施策推進関係者会議(第2回)」において発表された「認知症及び軽度認知障害の有病率調査並びに将来推計に関する研究」で、2040年に認知症患者が約584万人、認知症予備群とされる軽度認知障害(MCI)患者が約613万人に上るという推計が公表されたのです。
65歳以上の高齢者のうち、およそ3人に1人は認知症かMCIになると試算されました。
これは九州大学大学院医学研究院の二宮利治教授(衛生・公衆衛生学分野)が中心となって、2022年から2023年にかけて、福岡県の久山町、石川県七尾市中島町、愛媛県伊予市中山町、島根県の海士町という、全国を股にかけた4地域で「認知症患者の有病率」を調べた結果から導き出された試算です。
会場調査や訪問診察を併用して、対象となった患者をもれなく調査する「悉皆(しっかい)調査」でした。
4地域で調査対象となった65歳以上の7143人のうち、6675人から回答を得て、そのうちの認知症患者の人数から有病率を算出しています。
データを基に推計すると、全国の認知症患者は2025年に約472万人、2040年に約584万人、2060年に約645万人に増えます。MCI患者は、2025年で約564万人、2040年に約613万人と推計されました。
右肩上がりに増えるMCI患者
ただし、認知症患者は厚生労働省による以前のデータでは「2040年に802万人に達する」とされていたので、約200万人減った計算です。調査を担当した二宮教授は、「成人の喫煙率減少や血圧のコントロールなど健康的な生活を意識したことで、認知機能低下の進行が抑えられたのではないか」と分析しています。
このニュースには、認知症を予防できる可能性が示唆されたことで希望もありますが、患者さんの数が右肩上がりに増えていく現実は避けられないでしょう。
MCIは、生活習慣の改善や周りのサポートなどによって、30%くらいが正常に戻る可能性のあることがわかっています。
2023年12月に販売が始まったアルツハイマー病の進行を抑える画期的な治療薬「レカネマブ」の対象になるのも、MCIや軽度認知症です。
認知症患者さんが地域で安心して過ごせるためにも、自治体や介護に関わる人たちと連携して、患者さんを早期に見つけて治療につなげることも、私たちの大事な使命です。
そうした患者さんがいつでも気軽に受診できるクリニックが、地域に必要なのです。
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