NASAで起こった「最悪の事故」から学ぶべき"教訓" なぜ「100年に一度の出来事」が頻繁にあるのか

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彼は予定どおり海に着水した。そこからはヘリコプターで安全な場所まで運ばれることになっていた。しかし、そこでちょっとした不運なアクシデントが起こった。ヘリコプターの救助ロープと体を連結させている最中に、滑って海に落ちてしまったのだ。

これ自体は大した事故ではなく、救助ヘリの隊員も誰一人うろたえなかった。宇宙服は防水仕様になっていたし、浮力もあるはずだったからだ。

ところが、フェイスプレートを開けていたために、プラザーは水に無防備になっていた。海水が宇宙服に流れ込み、彼は溺死した。

人間を宇宙に送り出すのに、どれだけの計画を立てる必要があるか、考えてみてほしい。

さまざまな専門知識を駆使して、いくつもの不測の事態に備える。もしこうなったら、さらにそのあとこうなったらと、どれだけ多くのことを想定するか。あらゆる細部に至るまで、何千人もの専門家が熟慮する。

おそらくNASAは、かつてないほど計画重視の組織といえるだろう。胸で十字を切って幸運を祈るだけでは、月には行けない。考えうるリスクすべてについてプランA、プランB、プランCが用意されている。

それでも、そこまでの計画をもってしても、誰も想定していなかった些細な出来事が大惨事を招く。

投資アドバイザーのカール・リチャーズはこう述べている。

「リスクとは、あらゆる可能性を想定し尽くしたと思ったあとに残っているものだ」

これこそ、リスクの真の定義だ。想像しうる限りのリスクに備えたあとに残っているもの。リスクとは、あなたには予想できないもののことなのだ。

宝くじに2度当たった女性の話

私たちが暮らす広い世界では、「めったに起こらない出来事」が起こる確率が低く見積もられやすい。心理学者でノーベル経済学賞受賞者のダニエル・カーネマンは、かつてこう述べた。

「人間は、非常に大きな数字や非常に小さな数字を理解できない。その事実を認めたほうが何かと役に立つだろう」

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