ハワイの「ABCストア」米国本土にも店を出す狙い 創業した日系家族に受け継がれてきた経営哲学
ABCストアの経営者としての顔以外に、ポールさんはいくつもの社会的な職責を負っている。非営利団体の活動を支援するために両親が設立したコササ財団会長、ハワイ交響楽団会長のほか、セントラルパシフィック銀行、クアキニ病院の理事などだ。
「これらはビジネスや資本をベースにしたエコシステムであり、(利益は)コミュニティーに再投資されるんだ。私の祖父母や近所の人々がお互いに助け合ってきたことを思い出してほしい。ABCが銀行を助け、銀行は地域のビジネスを助け、従業員にも利益が分配される、(財団には)奨学金制度もある。彼らの扶養家族は医者や弁護士などあらゆる職業に就くことができる。ある種、自給自足のサイクルがずっと続いているんだ」
中でも、非営利の独立系医療機関としてはアメリカでも数少ないというクアキニ病院の立て直しのため、寄付の呼びかけに特に力を入れている。
「コロナで経営が苦しくなった。バイリンガルの医師と看護師がいて、優れた技術があり、日本との協力関係もある。優先事項は患者のケアと安全だ。経済的なことを優先して、それらを妥協するわけにはいかない。クアキニ病院の経営が回復して自立し、地元の人々だけじゃなく、日本人観光客にも質の高いケアを提供することが私たちの使命だ。元々は日本人のために設立されたようなものだからね」
アメリカ本土にも店を出す
そんなコササさん率いるABCストアは来年、アメリカ・ラスベガスに6店舗目をオープンさせる。ハワイからアメリカ本土に店を出すのも、両親から受け継いだ「哲学」に基づく経営判断だという。
「面白いのは、アメリカ本土の店舗で得た収益がハワイに戻ってくるということだ。多くの場合、本土の企業がハワイにやってくる。プライベートエクイティとかが所有するホテルで、すべての利益は本土に流れ出ていく。私たちはそれをひっくり返してここ(ハワイ)に持ってこようと考えた。ハワイを助けるんだ」
一方で、チェーン店を買収するような「積極的な拡大思考は持っていない」。現在、注力しているのは、大規模火災の被害にあったマウイ島・ラハイナの再建への貢献だ。ABCストアも3店舗が全焼したという。
「地元企業が苦境に立たされているのは気の毒だ。行政と土地所有者、そして地域社会が協力して再建に取り組むための話し合いが行われている。(これまで)本土型の企業やデベロッパーに多くを奪われてしまった。先行きはまだわからないが、私は地元企業のビジネスが繁栄することに期待している」
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