ハワイの「ABCストア」米国本土にも店を出す狙い 創業した日系家族に受け継がれてきた経営哲学

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「終身雇用も日本の企業がやってきたもので、私の両親も同じような文化を採用した。ABCで懸命に働けば、一生の仕事がある。退職後の生活にも役立つだろう。その哲学はほとんどの従業員に根付いてきた」といい、こう続けた。

「だが今、若い世代にはそれが理解できないから難しいんだ。そのために私たちは多くの人材を失い、多くの人を雇う。1週間働いただけで連絡もなく、こなくなることもある。残念だが、そのうち1人が残ってくれて、いい会社だと理解し、そして定着するのが現状だ」

従業員が経済的に繁栄することが重要

ポールさんは、祖父母や両親から受け継いだ日本型経営の特徴の一部が、自社の企業文化に受け継がれていることを自覚している。経営を取り巻く激しい環境変化を通して改めて、その本質的な価値に気付かされるという。

「必要なのは、日本の企業が過去を見直し、先人が築き上げた成功を見て、その教訓のいくつかを今日の経営に取り入れようとすることだ。昔はもっと会社は慈悲深かった。株主は利益を求める。でもオーナーにとって利益がすべてではないんだ。

オーナーはヨットやプライベートジェットを買う必要はない。それよりも、従業員が経済的に繁栄し、次の世代、彼らの子どもたちが繁栄することがもっと重要だ。それが私の信念であり、従業員と共有しようと努めていることだ」

ABCストア ハワイ
ABCストアのオリジナルTシャツはハワイ土産の代表格(筆者撮影)

顧客と向き合うサービス業の現場では常に、トップの社員との向き合い方も問われている。ポールさんが重視しているのは、「品格」「自分自身に誇りを持つこと」だという。

「例えば、遅刻をした従業員がバスが遅れた、寝坊したと言い訳をする。でも、自分の問題を何かのせいにしてはいけない。だから私は彼らにいうんだ。あなたはもっとうまくやれると。自尊心を高めたいなら、自分の人生を自分でコントロールしなければならない。そうすれば、いいことが起こる。一種の哲学なんだ」

もちろん、こうした問いかけがスタッフ全員の心に響くとは思っていない。ポールさんは「その中の少なくとも10%を獲得できれば、僕の勝ちだ」と笑顔を見せる。

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