ビヨンドMBAの可能性秘める日本の「100年企業」 元中小企業庁長官が語る「温故知新」経営の強み

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「100年経営の会」顧問、シン・ニホン パブリックアフェアーズで100年経営アドバイザーを務める前田泰宏氏。(撮影/梅谷秀司)
日本には創業・設立から100年を超える「100年企業」の数が4万社以上あり、世界で最も老舗が多い国とされる。
100年企業についてはこれまでも一部の研究者やメディアが事例やエピソードを紹介してきた。そこからさらに一歩進め、日本の100年企業が持つ強みを体系化、理論化しているのが元中小企業庁長官でシン・ニホン パブリックアフェアーズの100年経営アドバイザーである前田泰宏氏だ。
前田氏は「欧米のMBA(経営修士学)に対抗しうる経営理論が100年企業には詰まっている」と語る。真意を聞いた。

――日本は老舗が多い国だと言われます。

帝国データバンクの調査によると、日本で創業・設立100年を超える企業(以下、100年企業)の数は2022年に初めて4万社を突破し、2023年9月時点で4万3631社に達している。今年2024年には新たに2019社が加わる。倒産する企業もあるが、差し引きで毎年1000~2000の会社が設立100年を迎えている。

世界の100年企業数は2022年時点で約7万5000社程度とされるため、世界の約6割が日本に集中していることになる。日本は世界に冠たる老舗大国と言えるのだ。

日本はGDP(国内総生産)ではとっくに中国に抜かれている。一人当たりGDPも20位前後に甘んじ、2030年代には韓国、台湾に抜かれるという試算が出ている。日本の産業界は自信を失いかけている。

だが、日本が世界ランキング1位を保ち続けることができる分野が100年企業だ。単にランキングがトップというだけではない。欧米のMBAにも対抗しうる経営理論が100年企業には詰まっている。その事実を体系化、理論化して世界に発信していきたいと考えている。

100年続くカギは「温故知新」

――100年企業にはどんな特徴があるのでしょうか。

通常の経営学は、移り変わる時代の中でビジネスモデルを修正し、マーケットを睨み、テクノロジーを駆使しながら利益最大化を図ることを基本とする。こうした「知新」の能力は経営には必ず必要だ。

しかしそれだけで100年も事業を継続できるかというと、できない。100年企業の創業者は「知新」は他人に任せていることもある。知新は、代替可能だからだ。

老舗企業の創業者が担うのは代替不可能なもの、すなわち「温故」だ。

――温故とは。

日本の老舗企業は必ずといっていいほど次の3つの理念を所持している。「社会課題の解決」「自然との共生」「利他の精神」だ。

「自然との共生」は日本ではよく耳にする言葉だが、キリスト教のカトリックの教えとは対極にある概念だ。旧約聖書では、神は人間に自然を支配せよと教えている。人間中心の自然観だと言ってよい。

これに対し、自然と共生するという考え方はアジアひいては日本にしかない。より踏み込んでいえば神道の世界観だ。この地では、自然を支配できると考えることは人間のおごりだと見なされる。

理念と合わせて100年企業の創業者が重視しているのが信頼だ。従業員や顧客、株主、地域といったステークホルダーとの信頼関係である。

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