「家父長制」は不変なのか?長い歴史から紐解く 世界各地を訪ね歩く科学ジャーナリストの視点
家父長制は人類誕生のときから続く不可避なものなのか?世界各地を訪ね歩いた科学ジャーナリストのアンジェラ・サイニー氏が上梓した『家父長制の起源 男たちはいかにして支配者になったのか』を一部抜粋・再構成し、家父長制の歴史を紐解きます。
移動を続ける人類
人類の歴史は絶え間ない移動の物語だ。あちこちに人が移動し、新しいアイデアや技術を運んできた様子からもそのことがわかる。だが、人類の歴史は、他者を思いどおりにしようとする人々の物語でもあった。
世界最古の国家は、ジレンマに陥っていた。国家は今でこそ、心強く確固たる存在に感じられるが、かつてはゼロから構築しなければならないものだった。
国家が抱える課題は、条件が気に入らないからといって人々が国境の外にふらふらと出ていかないように説得することだった、とアメリカの人類学者、ジェームズ・スコットには教えられた。スコットは、初期の国家が登場した経緯とその拡大を促した要因の研究に生涯を捧げてきた研究者である。
人口がいなければ、国家の力は失われる。だから、人々は何よりも貴重な資源だった。
スコットは古代メソポタミアに注目していた。ユーフラテス川とチグリス川に挟まれた流域で、肥沃な三日月地帯の一部である。
トピックボードAD
有料会員限定記事
キャリア・教育の人気記事
無料会員登録はこちら
ログインはこちら