「日本で魚が獲れない理由」を知った小学生の驚愕 よくある大人の反論「外国船・海水温上昇・クジラ」

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マイワシの生産量は10年前に比べて大きく増えていますが、周期があるためそう遠くないうちに減少に転じてしまいます。マイワシは大きな資源変動がある8年前後の寿命の魚です。0~1歳のマイワシを大量に獲ってしまえば「成長乱獲」が起きるだけでなく、価値が低いためほぼ食用ではなく、飼料などに使われる「フィッシュミール」に回っています。

(出所)エサになってしまう小型のマイワシ(左上)と脂がのった大きなマイワシ(左下) 

イベントで子供たちが見学した釧路港では9割以上が丸のままフィッシュミールになっています。大きくなれば、鮮魚・缶詰・加工品などさまざまな用途に使えます。大きくなったマイワシから、可食部を取って、頭・骨・内臓などをフィッシュミールに回す。ノルウェーのニシン漁業で行われている例を基にした説明に子供たちは高い関心を示していました。

体験の重要性

ノルウェーでのかつてのニシン水揚げ風景。資源は崩壊して北海道と同じ状態だった。(画像:筆者提供)

日本の水産資源管理の実態に対して、「そんなわけない!」「ちゃんと考えられてとっているはずだ」「それは偏った意見だ」といった考えを持っている方は、少なくないと思います。こういった先入観は、北海道だけでなく全国に蔓延していることでしょう。この先入観こそが、日本の水産資源を回復させるにあたっての元凶であると思料します。

2023年の9月にノルウェー大使館からの招待で、ノルウェーを訪問する機会がありました。その際にノルウェーシーフードのアンバサダーに就任されたフレンチの三國清三シェフも同行されました。

道中で日本の水産資源管理に関する問題点を説明したところ、三國シェフから上と同じようなコメントがありました。しかしながら、数々のノルウェーでの現場を訪問されると、考えが180度変わったようで、今度はお仲間に話をしてほしいとなりました。その後はさらに広げていきたいというご意向です。

ノルウェーにて。三國シェフ(右)と筆者(写真:筆者提供)

かつて北海道の実家が漁業を営んでおり、資源管理はされていたというご理解であったと思います。ところが、ノルウェーの現場や、過去の写真などを見るとノルウェーと日本の違いは資源管理にあると気づかれたはずです。ノルウェーも1960年代前後にニシンの資源を乱獲で崩壊させてしまいました。しかし、補助金を使って減船を実施し、合わせて約20年間漁獲を我慢することで、今では資源は大幅に回復しています。

皆さんにノルウェーの現場を見ていただくというのは容易ではありません。しかしこのような発信を通じて、微力ながら少しでも多くの方に水産資源管理の問題点とその解決方法について気付いていただけたら、それが筆者の望外の喜びです。

片野 歩 Fisk Japan CEO

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かたの・あゆむ / Ayumu Katano

早稲田大学卒。Youtube「おさかな研究所」発信。2022年東洋経済オンラインでニューウェーブ賞受賞。2015年水産物の持続可能性(サスティナビリティー)を議論する国際会議シーフードサミットで日本人初の最優秀賞を政策提言(Advocacy)部門で受賞。長年北欧を主体とした水産物の買付業務に携わる。特に世界第2位の輸出国であるノルウェーには、20年以上毎年訪問を続けてきた。著書に『日本の水産資源管理』(慶應義塾大学出版会)、『日本の漁業が崩壊する本当の理由』他。

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