福島原発「デブリ採取より廃炉計画見直しが先決」 松久保肇・原子力資料情報室事務局長に聞く
――原子力資料情報室の声明文は、廃炉費用の見積もりにも疑問を呈しています。
経済産業省が有識者を集めて設置した「東京電力改革・1F問題委員会」の「東電改革提言」と題した報告書(2016年12月20日)では、燃料デブリ取り出しまでに要する費用は最大8兆円と見積もられている。それを踏まえ、東電はその8兆円の捻出のために、廃炉等積立金として2017年度から年平均3000億円を積み立てている。
しかし、8兆円には、デブリ取り出し以降に必要な施設の解体や廃棄物、汚染土壌の処理費用は含まれていない。それらの費用も勘案した場合、廃炉に必要な費用の総額は、東電の負担能力をはるかに上回ってしまう可能性が高い。つまり、廃炉計画は事実上行き詰まっている。企業としても成り立たない。
政府の審議会でも議題に上らず
――松久保さんは経産省の審議会である総合資源エネルギー調査会・電力・ガス事業分科会・原子力小委員会のメンバーです。これまで福島第一原発の廃炉計画についてはどのような議論がなされてきたのでしょうか。
ほとんど行われていない。これまでの議論は、既存原発の再稼働や運転期間の延長、原発の新増設に際しての資金の確保のあり方など、原発推進のための事業環境整備の話ばかりだった。
先般、政府は福島原発事故の賠償費用の上限を引き上げたが、これについても原子力小委では議論のテーマにならなかった。
原子力小委員会の開催趣旨には、「福島の復興・再生に向けた取り組み」「原子力依存度低減に向けた課題(廃炉等)」という文言があるが、福島原発事故の処理のあり方については、第三者のチェックが入る体制になっていない。事実上、経産省がすべてを決めてしまっているのが実態だ。
――福島第一原発の廃炉は今後どう進めるべきでしょうか。
燃料デブリを今すぐに取り出すことに意味があるのか、強い疑問を感じている。最終的には取り出さなければならないが、非常に放射線量が高く、取り出し方法も見えていない中ではリスクが大きすぎる。
現在の国や東電の説明は、あたかもきちんと廃炉をやり遂げることができるかのような幻想を国民や福島県民に与えてしまっている。実際には、スケジュール優先で現実を見ない計画のまま、先の見えない困難な作業をやり続けているというのが実態だ。
2051年に廃炉を終わらせるという無理なスケジュールが、さまざまな問題を引き起こしている。
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