福島原発のデブリ「試験的取り出し」その意義は? 更田豊志・原賠機構上席技監に展望を聞く
――東電が燃料デブリの試験的取り出しに着手しました。どのような意義があるのでしょうか。
試験的取り出しの最大の意義は、東電および協力企業が将来の本格的な取り出しに向けての“実戦経験”を積めることにある。
燃料デブリの取り出しというのは、原子炉格納容器という密閉状態の構造物の中から、取り出したいものだけを取り出すという作業だ。ここで留意しなければならないことは、作業従事者が過度な被曝をしないようにすること、そして取り出したいもの以外のものが外部に出てこないようにすることだ。
これまで、福島第一原発の廃炉作業では、放射性物質を含んだダストの飛散で世の中を騒がせたことがあった。燃料デブリの取り出しは、そうした事態を回避しつつ、取り出したいものだけを取り出すという難しい作業になる。その経験を積めることにいちばんの意義がある。
試験的取り出しの最大の意義は「経験を積むこと」
そして2つ目の意義としては、取り出したデブリを運搬、保管、分析するという一連の作業の経験を積めることがある。3つ目としては、デブリに関する情報を得られることがある。
ただ、燃料デブリは1~3号機合計で約880トンあると言われ、その性状や成り立ちは一様ではない。原子炉圧力容器内に残っているデブリは溶けずに砂利のような形状をしているかもしれない。1979年に発生したアメリカのスリーマイル島原発の炉心溶融事故でも見つかったように、燃料棒が切り株のように折れている状態のものもあるだろう。
他方、核燃料が溶けて周りの金属と混合しているものもあれば、今回の試験的取り出しの対象となりそうな、コンクリートと混ざっているものもあるだろう。燃料デブリと言ってもさまざまだ。
そのうちのごく一部、3グラム以下の耳かき1杯分を取ってきたからといって、原発事故がどのように進展したかの解析が格段に進むわけでもない。これからの本格的取り出し作業全般にわたる重要な情報を得られるとまでは期待していない。今回、着手した2号機でも違った場所、たとえば格納容器の上部とか、圧力容器の中から取り出すことができれば、全体像はもう少しわかってくるかもしれない。
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