福島原発のデブリ「試験的取り出し」その意義は? 更田豊志・原賠機構上席技監に展望を聞く
――更田さんが委員長を務める、原子力損害賠償・廃炉等支援機構の「燃料デブリ取り出し工法評価小委員会」の報告書(2024年3月7日)では、燃料デブリの本格的取り出し対象の初号機は今回の2号機ではなく、3号機を対象に大規模取り出し工法を検討していくという記述になっています。
1~3号機それぞれで可能性や課題がある。2号機は建屋の水素爆発を経験していないので、建屋の堅牢性に関しては多少なりとも信用できる。これに対して1号機および3号機は建屋水素爆発を経験しているので残った構造物の強度という面でより厳しい対応を迫られる。
他方、1号機および2号機には使用済み核燃料が原子炉建屋内のプールに入っている。使用済み核燃料を残しておきながら燃料デブリの取り出し作業を実施することは難しい。原子炉建屋周辺の環境に関しては、1号機および2号機の共用排気筒周辺では放射性物質による汚染が著しく作業が困難。こうした事情に鑑みて、3号機から検討を進めていくこととした。
今後1~2年に東電がすべきこと
――デブリ小委の提言では、デブリ取り出しについて「今後1~2年の間で東電がその後の見通しを整理することが求められる」と記されています。わかりやすく言うと、東電は何をすべきだというのでしょうか。
小委は「こういう工法で」という方向性は示しているが、東電はそれを基に、取り出しのための工法を具体的に設計していかなければならない。設計とともに重要なのは、ゼネコンなどの企業に作業を引き受けてもらえることだ。つまり現実性のある設計をすることが重要。東電がこれを1~2年かけてやっていく。それにより、このくらいの作業量が必要といった見通しが徐々にできてくる。
――その後の本格取り出しのステップはどのようになりますか。
燃料デブリ本格取り出しの行程は大まかに3つの段階に分けることができる。
最初の段階は、取り出し準備手前の環境整備の段階だ。取り出しに必要な建造物の構築に着手する前に、周辺の片付け作業をしなければならない。片付けができて初めて、第2段階である、建造物を造る段階に入る。そして第3段階で燃料デブリの取り出しを実施する。
燃料デブリ取り出しに10年とか20年かかると一口に言っても、毎年、一定量の取り出しができるわけではない。非常にラフな言い方をすると、原子炉建屋そのものを地下から屋上まで新たな構造物で囲う「冠水工法」を採用した場合、工事そのものがきわめて大がかりになるため、準備期間は全体の9割といったイメージになる。
冠水工法ではいったん燃料デブリの取り出し作業が始まれば順調に取り出せる可能性が高いが、そこまでにたどり着くことが難しい。そもそも大量の水を蓄えられる構造物を造らなければならない。他方、燃料デブリが気中に露出した状態もしくは低水位で浸漬(しんせき)した状態で取り出す「気中工法」についても別の難しさがある。
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