福島原発のデブリ「試験的取り出し」その意義は? 更田豊志・原賠機構上席技監に展望を聞く

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――政府が定めた福島第一原発の廃炉に関する「中長期ロードマップ」では、原発事故から40年後の2051年までに廃止措置作業を完了するとしています。取り出した燃料デブリの県外処分も政府は約束しています。果たしてこれらの約束は現実的でしょうか。

30~40年とされた廃炉の期間は、事故から間もない時期に、技術的な情報が得られていない中で決められたものだ。30~40年という期間に明確な技術的な根拠があるわけではない。

とはいっても、その時点では一定の期間を決める必要に迫られた。今の時点では燃料デブリに関する情報が徐々に出てきた。今後1~2年かけて東電が設計の詳細化をしていくと、もう少し意味のある見通しを示せるようになる。その時に、30~40年という期間を見直す必要があるのか否か、見直す必要があるとしたらどのくらいといったことについて議論が徐々にできるようになるだろう。

燃料デブリやその他の放射性廃棄物の行き先の決定についても、廃棄物の保管・処分方法が決まることが大前提になる。そもそも廃棄物を処理するのかしないのかについても、議論が必要だ。

燃料デブリについてはおそらくこういう処理をするという技術的見通しは現時点でも立てることはできる。ただし、決め方の問題がある。行き先については、一般の原発の高レベル放射性廃棄物の最終処分地すら決まらない段階で、燃料デブリの最終処分地の議論が先に進むとは考えがたい。

廃炉作業は8兆円に収まるのか?

――廃炉に関しては燃料デブリの取り出しまでの段階に要する費用として、政府が8兆円という試算をしています。その程度で収まるのでしょうか。

私自身が言及できることはない。デブリ小委では、取り出し方法を検討するうえでいくらかかるかというお金の問題についてはあまり意識されていない。もちろん天文学的な数字にならないようにしなければならない。作業員の安全を最優先にし、周辺環境に影響を与えない工法を選ぶことが最も重要だ。小委では予算や資金の話はほとんどしていない。

――6月9日から同29日にかけて、いわき市や南相馬市など福島県の13市町村で、原子力損害賠償・廃炉等支援機構主催による、燃料デブリ取り出し工法に関する住民説明会が開催されました。

私は13回のうち11回に参加し、住民の皆さんと対話した。周知期間が非常に短かったこともあり、参加者は限られていたが、郡山市や会津若松市などの遠方から来てくださった方もいた。

11月には福島市、郡山市、会津若松市を含む16市町村で開催したい。説明会というタイトルを付けたが、伝えること以上に住民の皆さんの声を聞くことに重きを置いた。今後の廃炉作業では処理水の海洋放出問題とは異なり、検討段階から住民の声を聞きつつ検討していくことが大事だ。年に2度くらいは続けたい。デブリ小委も活動を継続し、東電の詳細設計の作業をチェックしていきたい。

岡田 広行 東洋経済 解説部コラムニスト

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おかだ ひろゆき / Hiroyuki Okada

1966年10月生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。1990年、東洋経済新報社入社。産業部、『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、企業情報部などを経て、現在、解説部コラムニスト。電力・ガス業界を担当し、エネルギー・環境問題について執筆するほか、2011年3月の東日本大震災発生以来、被災地の取材も続けている。著書に『被災弱者』(岩波新書)

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